最新記事

中国共産党

中国新「中央宣講団」結成――中国に進出する日本企業にも影響か

2017年11月6日(月)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

コラム「習近平新指導部の上海視察は何を意味するのか?」に書いたように、習近平が本気で「初心、忘るべからず」という気持で中国共産党の初心に辿り着こうとすれば、目を覆いたくなるような事実に直面するしかないだろう。

あるいは、それを承知の上で、「いかにして嘘をつき続けるか」に専念するのか?

大臣は身分が低い

もう一つ、この「中央宣講団」メンバーで目立つのは36名の最後あたりに「工業と信息(情報)部部長」とか「財政部部長」あるいは「農業部部長」など、「部長(大臣)」の名前が羅列してあることだ。彼らは25名いる中共中央政治局委員ではなく、200名以上いる中共中央委員会委員でしかない。

これが中国共産党一党支配体制を如実に物語っており、あくまでも中国共産党が上にあるのであって、政府機関(国務院)の大臣などは「下の下」の方の身分でしかないことを示すいい例である。

陳敏爾が入っている

党の精神を全国に広めていくこの「中央宣講団」に、このたび新チャイナ・セブンから外された重慶市書記の陳敏爾(ちん・びんじ)氏が入っていることは、やはり興味深い。

早くから中共中央政治局委員だった胡春華(広東省書記)が入らずに、このたびようやく中共中央政治局委員になった陳敏爾を入れた。

胡春華では力があり過ぎるので、学歴も低く論理性もそれほど高くない陳敏爾を入れたのは、5年後の習近平体制を占う上で示唆的である。

王滬寧が話をする姿が......

王滬寧(おう・こねい)というのは、苦虫をかみつぶしたように、口を一文字に結び、複雑な目の光をギロリとさせている、あの姿がいい。その王滬寧がCCTVで手振りよろしくペラペラと話す姿は、何とも不釣り合いだ。これまで押し黙っていることによって、そのキラリとした深い知性を覗かせ、言うならば一種の畏敬の念を抱かせたものだが、彼は新チャイナ・セブンのイデオロギー担当として会議に出席し、発言した。

王滬寧はまさに、中国共産党の精神文明思想を指導する立場にあり、「中央宣講団」を管轄する役割を果たす。彼以上に、この論理構築に長けた者はいない。

しかし、正直なところ、発言するしぐさや声を聞いて、神秘性は一瞬で失せた。

まあ、魅力がなくなったと言ってもいいだろうか。俗物になってしまった。

動画をリンクできるかどうか、だいぶ捜したが見つからない。静止画像だが、11月1日の新華網が報道しているので、その姿をご覧いただきたい。

適役だとは思う。

彼ほどの人間なら、毛沢東が日中戦争時代、何をしたかは知っているはずだ。そこを回避して隠蔽する術も心得ているだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中