中国、党大会中の言論統制を強化 人権活動家に「休暇」強制

7月、ノーベル賞受賞者の劉暁波氏の妻劉霞氏が住む北京のアパート前で、写真を撮ろうとしたカメラマンを制止する私服の治安職員(2017年 ロイター/Thomas Peter)
北京を拠点とする中国の著名な人権活動家の胡佳氏は、中国政府が提供してくれる「休暇」の行先として南部の都市厦門を希望したが、公安当局者は首を縦に振らなかった。
「今回はもっと人里離れたところに行けと言われた」。滞在先である南西部の雲南省から、胡氏はロイターの電話取材にそう語った。風光明媚で多彩な少数民族文化がある雲南省は、観光客の人気スポットだ。
人権団体によると、胡氏は、北京で18日から1週間の日程で開催されている第19回中国共産党大会の期間中に、当局によって拘束、監視強化、もしくは「休暇」に出された数十人の活動家の1人だという。5年に1度開かれる党大会では、習近平総書記(国家主席)が権力の掌握をさらに進めるとみられている。
強制休暇に際し、胡氏は2人の政府監視人と一緒に行先を決めた。最初の行き先として古い町並みが残る雲南省大理市を胡氏が提案し、監視役として同行する公安部職員が、2番目と3番目の行き先を選んだ。南部の貴州省貴陽市と沿岸部の北海市だ。
胡氏は3人分の旅費は1万元(約17万円)近くになるとみているが、費用は当局が全て支払う。監視人は旅費を節約しようと安いホテルを選び、バスを移動手段にした、と同氏は言う。
党大会終了から数日後の10月28日、胡氏は飛行機で北京に戻る予定だ。
「観光はできるが、公安がどこにでもついてくる」と、胡氏は語る。
ロイターは、胡氏や他の活動家の話を独自に確認することはできなかった。
中国公安部に民主活動家らの拘束や「休暇」に関する質問状をファクスしたが、回答は得られなかった。活動家の処遇に関する質問に対して、「訴追されたのは社会の安定を脅かした犯罪者で、中国の全ての人は法の下で平等に扱われる」以外の回答を中国当局が寄せるのは、まれだ。
重要な政治イベントの前に、中国当局が人権活動家に対する監視や拘束を強化するのは珍しくない。党や国家に対する批判で知られる著名な活動家の場合は、なおさらだ。