最新記事

ユネスコ

トランプ「ユネスコ脱退」、習近平「高笑い」

2017年10月16日(月)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


習近平に世界を制覇させていいのか

ここまで政治化し不公平な決議を出していくユネスコに抗議を表明していくのは正当なことではある。しかし、「脱却」が適切な選択なのかは熟慮しなければなるまい。

脱却あるいは分担金を支払わなければ発言権はなくなり、チャイナ・マネーで権限を増やしていく中国に有利になっていくことは明らかだ。それ以外の抗議の表明の仕方を選ばないと、何もかも中国の思う壺となる。

日米が抜けてユネスコを骨抜きにしようとしても、中国はチャイナ・マネーと一帯一路構想により、ヨーロッパを含めたその他大勢の国々を惹きつけている。

このままでは習近平の思惑通りに世界が動いていくことになる。

ワシントンを中心に「天安門事件を世界記憶遺産に」と頑張っている中国人民主活動家たちの願いも、これにより踏みにじられていくことだろう。

拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』に書いた危機感は、現実のものになろうとしている。

それを可能にさせているのは日本

 これを許したのは、ソ連崩壊以降の、そして天安門時間以降の窮地に追い込まれた中国に手を差し伸べた「日本」だ! 天皇陛下訪中まで断行して、中国を助けた。

今もなお安倍内閣は、「日中韓三か国協議のため李克強首相を日本に招聘できるかもしれないこと」や「習近平国家主席訪日を実現させることが出来るかもしれないこと」を政治業績として挙げているようだ。

中国が日中戦争時代、日本軍と共謀して共産党を強大化させた事実が世界に知られてしまうことを恐れて言論弾圧を強化している中国に、なぜ日本は平身低頭、へつらわなければならないのか。

国家安全保障を本気で考えるのなら、その中国に「歴史の真相」を突き付ける勇気を持たなければならない。そしてトランプを説得し、堂々と意見を言える日本にならなければならないはずだ。

そうでなければ世界を制覇した中国が、日本の安全保障を脅かす日が目前に迫っている。

一帯一路に賛同するなど、中国に媚びている場合ではない。日本は大局を見失わないでほしい。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中