最新記事

中国共産党

誰がなるのか?――新チャイナ・セブン予測(6)

2017年10月18日(水)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平の側近だから、身びいきにしているという見方もあるが、筆者が独自に得た情報によれば、「ともかく腐敗問題で捕まる可能性の低い人」を選んでいるとのことで、浙江省時代からの部下なので、習近平は陳敏爾の為人(ひととなり)を熟知しているからというのが最大の理由のようだ。新チャイナ・セブンから「腐敗分子」が出たらおしまいだ。もう誰も彼もが「賄賂、汚職、口利き...」に染まっているので、よほど古くから熟知している人でないと「怖い」のだという。

そのため栗戦書(りつ・せんしょ)(中共中央書記処書記)も新チャイナ・セブンに入る可能性が高い。

習近平が最初に地方に出た河北省からの知り合いで、栗戦書の身辺が潔白であることを知っているからというが、彼に関しては、少々ややこしい経緯がある。

というのは今年7月、香港メディア「南華早報」に栗戦書の子女に関する腐敗問題が載ったからだ。「南華早報」はアリババの馬雲が、習近平への忠誠を誓うかのように買い取って中共傘下に置いてはいるが、実際のコントロール権は江沢民の大番頭、曽慶紅が握っている。

拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.63&64やp.119~129辺りにも書いたように、曽慶紅がいなければ、こんにちの習近平はいないと言っても過言ではないほど、習近平は曽慶紅のお蔭で出世街道を歩いてくることが出来た。

しかし習近平が反腐敗運動を始めてしまったものだから、腐敗の頂点にいる江沢民とその配下に恨まれることになった。もし「権力闘争」というなら、この敵対関係以外にはない。

「南華早報」に載った栗戦書の子女に関する腐敗スキャンダルは、すぐさま削除され謝罪文も掲載されたが、この辺りが本当に「真っ白なのか」という疑問点は残る。

筆者は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』を書いた時点で、すでに孫政才に関して「腐敗のにおいがつきまとっている」ことを書いているが(p.196~202)、それでも重慶市書記になり政治局委員になっていた。その意味で、栗戦書の場合も危険因子として残らないではない。

それでも習近平の栗戦書に対する信頼の方が勝っているのだろう。仕方がない。

栗戦書は現在中共中央政治局委員だが、陳敏爾は中共中央委員会委員でしかない。陳敏爾の場合は習近平と同じように政治局委員という段階を飛び級で、いきなり常務委員になることになる。これは、そう不正常なことではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中