最新記事

健康

座ってるだけなのに!? ミュージカル鑑賞が約30分のエクササイズに匹敵

2017年10月17日(火)17時50分
松丸さとみ

Amber Riley in Dreamgirls musical London clips inc. One Night Only-Youtube

座っているだけで最大心拍数の50〜70%

ミュージカル鑑賞が、約30分のエクササイズと同じくらい健康にいいことが明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とランカスター大学が、ロンドンでの劇場やイベントなどのチケット販売を行うアンコール・チケットの依頼で調査を行った。

ミュージカル『ドリームガールズ』のステージを生で鑑賞中の12人の、心拍数、脳の動き、その他の心理的な信号を観察した。

ステージを鑑賞中に、観客の心拍数は平均で28分間にわたり、最大心拍数の50〜70%程度にまで上がった。心臓病研究に取り組む団体、英国心臓基金によると、これは「心肺機能やスタミナを刺激する最適なレベル」だという。UCLは、「つまり、椅子に座っていたにもかかわらず、観客は平均28分間の健康的な有酸素運動をしたことになる」としている。

UCLのジョセフ・デブリン博士は、「心拍数が、ミュージカル開幕時の安静状態の時と比べ、第1幕の終わりまでに倍増し、第2幕では3倍になった」と述べ、心拍数の変化としては、スピードのある長いラリーをプレイしているプロのテニス選手と同じレベルだと説明している。

心拍に変化があるのは生のパフォーマンスだけ

アンコール・チケットは、心拍数のピークは、幕間の直前とショーの最後に始まっていると指摘している。実際に、12人の心拍数を記録した図からもその様子が見て取れる。図の赤い部分は、「健康的なエクササイズ」に推奨される心拍数のゾーンで、縦線は左から、開演時、幕間の始まり、幕間の終わり、終演時を示している。

UCLの研究者は他の研究を分析し、心拍数の平均値が高いからと言って、必ずしも感情的や認知的にパフォーマンスに熱中しているわけではないことに留意している。というのも、別の研究で、パフォーマンスなどに深く集中していると、興奮や心拍数はむしろ下がるということが示唆されたためだ。

とはいっても、数値の幅が広いということは、パフォーマンスに熱中して心拍数が低い状態から、興奮して心拍数が上がっているということであり、豊かな体験を示唆している可能性があると指摘している。

アンコール・チケットはさらに、日本の研究者である正田悠氏が北海道大学で博士号を取得した際の研究「How Live Performance Moves the Human Heart」(生演奏がいかにしてヒトの心を動かすか)に触れた。ピアニストの生演奏を見ている時の観客の心拍数と、同じ演奏をビデオ録画されたものを見ている時の心拍数を比べたものだ。調査の結果によると、音楽のテンポによって観客の心拍に変化が起こったのは、生演奏の時だけだったという。

デブリン博士はUCLの調査結果を受けて、ミュージカルを見ることによって生まれる感情の幅が、有酸素運動に匹敵するほど心臓を刺激し、心拍数を促進する可能性がある、と述べている。

『ドリームガールズ』は、米国人歌手ダイアナ・ロスとスプリームスをモデルにしたミュージカル。1960年代から1970年代のソウル音楽やR&B音楽の世界を描いている。米ブロードウェイで1981年に初公演され、6部門でトニー賞を受賞。現在は英国ロンドンで上演されている。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

情報BOX:パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRB、利下げ再開 雇用弱含みで年内の追加緩和示唆

ビジネス

FRB独立性侵害なら「深刻な影響」、独連銀総裁が警

ワールド

核問題巡り平行線、イランと欧州3カ国が外相協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中