最新記事

事件

「まぶた失い眠れない」 イギリスで急増する硫酸襲撃の恐怖

2017年8月7日(月)17時35分

8月3日、英国で硫酸など腐食性薬品を使った襲撃事件が急増し、被害者は政府に対し、薬品の販売規制強化と加害者に対する刑の厳罰化を求めている。写真は被害者の1人、アンドレアス・クリストフェロスさん(32)。7月31日撮影(2017年 ロイター/Peter Nicholls)

英国で硫酸など腐食性薬品を使った襲撃事件が急増し、被害者は政府に対し、薬品の販売規制強化と加害者に対する刑の厳罰化を求めている。

今年6月、誕生日を祝うため外出していたいとこ同士の2人が、車の窓越しに酸性の物質をかけられるという事件が発生した。同様の事件が相次ぎ、ラッド内相は法整備の見直しに言及した。

その後もロンドンでは、強盗や犯罪組織がらみの暴力など複数の事件で同様の手口が用いられた。

英内務省は酸性物質を危険な武器として扱うよう検察官向けの基準作りと、量刑基準の見直しを始める計画であることを明らかにした。

ただ、こうした動きはアンドレアス・クリストフェロスさん(32)にとってほとんど安心をもたらさないだろう。クリストフェロスさんは2014年、自宅で顔面に酸性物質を浴びせられた。

「この問題で英国政府の戦略は完全に間違っていたと思う」

イングランド南西部にあるトゥルーロの自宅で、ロイターの取材に応じたクリストフェロスさんは語った。

「酸攻撃を行ったものは誰であれ、被害者が重傷であろうとなかろうと、終身刑に処されるべきだと思っている。最低でも20年あるべきだ」

ロンドン警視庁によると、管内で発生した酸性物質を使った事件の件数は2015年に261件だったが、16年には431件に増加した。今年はすでに282件発生している。

発生件数が増えている理由についてはっきりとした説明はないが、武器の取り締まり強化が始まった時期と重なる。「ツーストライクス」と呼ばれる規制により、ナイフの携行で2度有罪が確定すると、自動的に6カ月以上の禁錮刑が科せられることになった。

ロンドンに拠点を置く酸攻撃の被害者団体の代表を務めるジャフ・シャーさんは、銃やナイフは携行しているだけで罪に問われるのに、酸性物質はそうならないのは「法の抜け穴」だと指摘する。

「酸性物質の規制は適切な水準ではない」とシャーさんは語る。「もし酸攻撃を受ければ、警察は加害者が故意であったことを立証しなければならないが、それは極めて困難だ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ・メディア、株主にデジタルトークン配布へ 

ワールド

台湾、警戒態勢維持 中国は演習終了 習氏「台湾統一

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.6万件減の19.9万件

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 10
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中