最新記事

アメリカ政治

上院共和党のオバマケア代替案はエイリアンより信用できない!?

2017年6月29日(木)15時17分
ティム・マーシン

オバマケアの改廃について記者会見するミッチ・マコネル上院院内総務(共和党) Aaron P. Bernstein-REUTERS

<トランプ大統領の支持率も大きく下回る「史上最も不人気」な法案をどうするのか>

米共和党の上院指導部が先週発表した医療保険制度改革案(オバマケア代替法案)は驚くほど不人気だ。

試しに街行く人々に2つの質問をしてみるといい。
1)上院共和党のオバマケア代替案を支持するか
2)ロッキー山脈に住む山男ビッグフットを信じるか

1)よりも2)に「イエス」と答える人が多いはずだ。

支持率が30%台で低迷するドナルド・トランプ米大統領をはるかに下回る支持率だ。

【参考記事】撤廃寸前のオバマケアに加入者殺到の怪

下院で可決されたオバマケア改廃案に共和党のミッチ・マコネル院内総務が中心となって修正を加えたこの法案は、低所得層向けの給付を削って富裕層の保険料負担を減らそうというもの。米議会予算局の試算では、この法案が成立すれば、無保険者は2026年までに今より2200万人増えて、推定4600万人に達する見通し。

USAトゥデーと米サフォーク大学が実施した最新の世論調査では、この法案の支持率はわずか12%。

【参考記事】オバマケア廃止・代替案のあからさまな低所得層差別

共和党の上院議員は、これほど世論に嫌われる法案に賛成票を投じる勇気があるだろうか。この法案を支持するアメリカ人より、伝説の山男や胡散臭い陰謀論を信じるアメリカ人のほうが多い。民主党系調査機関パブリック・ポリシー・ポーリングの13年の調査結果によると──。

■ビッグフットの存在を信じているアメリカ人は14%

■製薬会社は儲けるために病気を作っていると考えるアメリカ人は15%

■「バラク・オバマ=反キリスト」説を信じるアメリカ人は13%

■1940年代にニューメキシコ州ロズウェルにUFOが墜落したが、米政府はそれを隠していると信じているアメリカ人は21%

■政府とメディアはテレビでサブリミナル映像を流して国民をマインドコントロールしようとしていると信じるアメリカ人は15%

【参考記事】NASA火星の大発見にも「陰謀」を疑うアメリカ人

代替案に勝てるのはレプティリアン仮説だけ

エイリアンの存在を信じている人も、上院共和党案の支持者よりはるかに多い。世論調査機関ユーガブの15年の調査によると、アメリカ人の54%が高度な知性を持つ地球外生命体の存在を信じている。

トランプが以前に広めた根も葉もないデマを信じている人も、共和党案を支持する人より多い。ユーガブの16年の調査では、アメリカ人の36%がオバマはケニア生まれだと信じ、31%が自閉症の原因はワクチンだと信じていた。

ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)などが28日に発表した調査結果によると、上院共和党の改廃法案は史上最も不人気な法案の一つ。

だが一つだけ救いがある。人間のような姿をしたトカゲ人が地球を支配しているという「レプティリアン陰謀説」を信じるのはアメリカ人の4%。

上院共和党のオバマケア改廃案はそれよりはましだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中