最新記事

ニュースデータ

働き盛りが読書しない日本に、やがて訪れる「思考停止」社会

2017年4月12日(水)17時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

働き盛りの長時間労働が読書率の低下に繋がっているのだろう sekulicn-iStock.  

<日本の30代~40代の読書率が、21世紀に入ってからの10年間で大きく下がっている。全国地域別の調査でも読書実施率の低下は顕著で、まるで日本では「知の剥奪」が進んでいるようだ>

「働き方改革」をどう実現するかが社会的課題となっているが、先月の福井新聞に次のような文章が載っていた。ブラック企業問題に取り組む、福井県の弁護士の談話だ。

「長時間労働で疲弊した人は新聞を読む気力もなく、物事を深く考えなくなる。少しの情報だけで自分の意見を決める。それが世論になってしまう。欧州では家族で食事をとりながら会話をしたり、広場やカフェで自由に議論をしたりする。時間に余裕があるかどうかは、民主主義の成熟と深く関わっている可能性がある」(福井新聞、2017年3月20日)。

日々の仕事に精一杯で、知識の「肥やし」を得ることができずにいる、日本の労働者の現状を言い当てている。この記事では新聞に触れているが、国民の読書の頻度も減ってきている。その傾向は、働き盛りの年齢層で顕著だ。

過去1年間に、自発的な趣味として読書をした人の割合の年齢カーブを描くと<図1>のようになる。2001年と2011年の折れ線グラフを比べてほしい。

maita170412-chart01.jpg

どの年齢層も、この10年間で読書の実施率が下がっている。この中には電子書籍による読書も含まれるので、スマホなどの機器の普及が原因ではない。電子書籍を含め、本を読む人が減ってきている、ということだ。

グラフから分かるように、働き盛りの層で減少幅が大きい。30代後半では55.1%から44.2%と、10ポイント以上も低下している。長時間労働ゆえに、本を読む余裕がなくなっているのだろう。

【参考記事】「残業100時間」攻防の茶番 労働生産性にまつわる誤解とは?

人手不足の影響からか、この10年間で平均労働時間は増えている。2011年のデータによると、40代前半の男性就業者の平均労働時間は、平日1日あたり10時間を超える。また、35~44歳の男性就業者の5人に1人が,1日12時間以上働いている(総務省『社会生活基本調査』)。

育児と介護が重なる「ダブルケア」の問題も生じている。晩婚化の影響で、この年齢層にも子育てに手がかかる小さい子供がいる家庭が多く、年老いた親の介護との「ダブル」の負担がのしかかっている。

MAGAZINE

特集:香港の出口

2019-8・27号(8/20発売)

拡大する香港デモは第2の天安門事件に? 中国「軍事介入」の可能性とリスク

人気ランキング

  • 1

    日韓対立の影響は?韓国経済に打撃大きく、日本経済にもマイナス 日韓関係の回復を強く望む

  • 2

    日本の重要性を見失った韓国

  • 3

    韓国人はなぜデモがそんなに好きなのか

  • 4

    乳がん細胞を脂肪細胞に変えることに成功:バーゼル…

  • 5

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで…

  • 6

    韓国・8月15日、文在寅大統領の退陣要求集会には、安…

  • 7

    「香港鎮圧」を警告する中国を困惑させる男

  • 8

    韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断…

  • 9

    日本人が知らない監視社会のプラス面──『幸福な監視…

  • 10

    韓国航空業界に再編の荒波 アシアナは投資ファンド…

  • 1

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで話題に

  • 2

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

  • 3

    日本の重要性を見失った韓国

  • 4

    世界が発想に驚いた日本の「ロボット尻尾」、使い道…

  • 5

    異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

  • 6

    若年層の頭蓋骨にツノ状の隆起ができていた......そ…

  • 7

    犯人の容姿への嘲笑に警告 9万件のコメントを集めた…

  • 8

    世界が知る「香港」は終わった

  • 9

    未成年性的虐待の被告の大富豪が拘置所で怪死、米メ…

  • 10

    韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断…

  • 1

    寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで話題に

  • 2

    日本の重要性を見失った韓国

  • 3

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 4

    異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

  • 5

    韓国で日本ボイコットに反旗? 日本文化めぐり分断…

  • 6

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいつ…

  • 7

    「韓国の反論は誤解だらけ」

  • 8

    デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「…

  • 9

    「韓国に致命的な結果もたらす」日韓の安保対立でア…

  • 10

    アメリカの衛星が捉えた金正恩「深刻な事態」の証拠…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月