最新記事

南スーダン

南スーダン飢饉を防げなかった国際社会

2017年2月23日(木)16時30分
ロビー・グラマー

食糧危機の南スーダンで炊事をする女性(2月2日、北東部のボーマ州ピボー) Siegfried Modola-REUTERS

<レイプや死肉食が横行する地獄の背景には、国連安保理が止めようとしなかった内戦がある>

南スーダン政府と国連は20日、紛争が続く南スーダンの一部地域で飢饉が発生したと宣言した。10万人が「既に飢えに苦しみ」、500万人近くが緊急援助を必要としていると、国連の人道支援機関は訴えた。

「最悪の懸念が的中した」と、国連食糧農業機関(FAO)のセルジュ・ティソ南スーダン駐在報道官は報告した。「多数の世帯は生存のための手段をすべて失っている」

国際社会が緊急に有効な介入を行わなければ、27万5000人近い子供が餓死する危険性があると、国連は警告した。

最も深刻な状況にあるのは、政府軍と反政府派が激しい戦闘を繰り広げてきた北部のユニティ州だ。

「紛争は食料供給の安定を脅かす主要な要因の1つだ」と、FAO上級エコノミストのロレンツォ・ベルーは語る。長期にわたる干ばつに加え、内戦の拡大は農業生産を直撃し、食料価格が高騰した。

南スーダンの食料危機は人災であり、回避しようとすればできた。昨年12月、国連安全保障理事会は、南スーダンへの武器輸出を禁じる決議案を否決した。採択されていれば、戦闘の激化を防げていたかもしれない。そうすれば、飢饉も防げたはずだと専門家は指摘する。民間の援助団体も何カ月も前から緊急援助の必要性を国際社会に訴えてきたが、反応は薄かった。

【参考記事】民族大虐殺迫る南スーダン。国連安保理の武器禁輸措置決議になぜ日本は消極的なのか


飢饉が発生した今もなお、各国の動きは鈍い。「心配なのは、援助物資がなくなることだ」と、南スーダンの首都ジュバ駐在のジョージ・フォミニェン国連報道官は言う。「このままでは食料の備蓄は6月末に底を突く。戦闘はいっこうに収まる気配がなく、緊急に必要なものは山ほどある」

【参考記事】南スーダンは大量虐殺前夜


「2011年のソマリア飢饉を見て、世界は二度とこんな悲劇を繰り返さないと誓ったはずだ」そう訴えるのは支援団体オックスファムの南スーダン支部の人道支援事業を指揮するジェーン・ドルーだ。100万人が犠牲になった1980年半ばのエチオピア大飢饉のときもそう誓った。「南スーダンの危機は何度も警告されてきたのに、国際社会は知らん顔だった。飢饉はそのツケだ」

家も畑も失った人々は生き延びるのに必死だ。「沼地で食べられるものを見つけて、どうにか餓死を免れるところまで追い込まれている」と、ドルーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中