最新記事

アート

お正月、日本の美にふれる 幻の絵巻も初公開「すみだ北斎美術館」

2016年12月28日(水)17時30分
坂本裕子 ※Pen Onlineより転載

葛飾北斎 《隅田川両岸景色図巻(部分:吉原室内)》 すみだ北斎美術館蔵 隅田川に遊んだ後は吉原の華やかな廓の風景が。さりげなく施された金彩も美しい絵巻のエンディング・シーンです。

 日本が世界に誇る浮世絵師・葛飾北斎は、本所割下水(現在の墨田区の北斎通り)付近に生まれました。この稀代の天才は、約90回もの引っ越しをしたことでも知られていますが、生涯をほぼ現在の墨田区内で過ごしながら、江戸後期の風物の傑作を生み出したのです。

 その北斎ゆかりの地に、新たに「すみだ北斎美術館」がオープンしました。墨田区のコレクションに、世界有数のコレクターであり、研究者でもあったピーター・モースのコレクション、日本の浮世絵研究の第一人者といわれる楢﨑宗重のコレクションという、豪華なラインアップで、さらに研究を進めるとともにその成果を企画展などを通して世界に発信していく拠点として機能します。

(参考記事:【年末年始に行きたい展覧会】選りすぐりのヨーロッパ近代絵画を上野の森美術館で堪能。「デトロイト美術館展」を見逃しちゃもったいない!

「街に開き、地域住民の方々に親しまれる美術館」をコンセプトに設計された建物は、ルーヴル美術館のランス分館も手がけた妹島知世によるもの。公園の一角に全身アルミの輝きを放つ建物は、やわらかく周囲の風景を映しだし、ゆるやかにスリットで分割されて、どこからでもアプローチが可能になっています。

newsweek_hokusai04_20161227.jpg

妹島和世設計のちょっと不思議な建築は、公園の緑とそこで遊ぶ子供たちの姿や声を反射させ、光とともに下町の一日の移ろいを映しだす、新たなランドマークになっていくでしょう。

newsweek_hokusai01_20161227.JPG

3階企画展第2展示室入り口。スリットの窓から入る光が明るいホールホワイエには、4階の展示室とつながる螺旋階段が。


 開館を記念した「北斎の帰還」展は、生誕の地でのオープンとともに、幻の絵巻とされていた『隅田川両岸景色図巻』の100余年ぶりの再発見と収蔵を記念したダブル帰還を寿ぐもの。

(参考記事:【年末年始に行きたい展覧会】 注目の映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンを、東京都写真美術館で目撃しましょう。

 全長7mからなるこの絵巻は、長らく海外に流失したまま所在が不明だったものが、2015年、墨田区に帰ってきました。この初公開のお披露目を兼ねた全巻一挙公開は必見です! このほか、紹介される錦絵、版本、肉筆画などは、メジャーどころ、名品ぞろい。摺りも保存状態もすばらしく、希少な逸品もならび、これからの企画展への期待も広がります。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

東証、ニデックを特別注意銘柄に28日指定 内部管理

ビジネス

HSBC、第3四半期に引当金11億ドル計上へ マド

ビジネス

日本国債の大規模入れ替え計画せず、金利上昇で含み損

ビジネス

米FRB議長人事、年内に決定する可能性=トランプ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中