最新記事

米大統領選

中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?

2016年11月7日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米大統領選で舌戦を繰り広げるトランプとクリントン Carlos Barria-REUTERS

 米大統領選を中国はどう見ているのか、そして当選者がヒラリーかトランプかによって中国にどういう影響を与えるか等に関して中国政府関係者を取材した。中国の報道に見られる傾向も総合して、現状をご紹介する。

外交関係とパワーバランスに関して

 以下、中国政府関係者への取材と、中国の報道に見られるオピニオンを総合して、目立ったものを列挙する。

 ●中国はいまや大国になっているので、ヒラリーとトランプのどちらが当選するかによって、大きな違いが出てくることはないだろう。ただし、トランプは「アメリカ国内問題の解決に全力を注ぐ」と言っているので、海外の行動に関しては縮小させることが考えられる。その意味ではトランプが当選する方が短期的には中国にいくらかは有利かもしれない。

 ●しかしアメリカが国内的に体力を温存し、より強い国になることができるとすれば、長期的にはヒラリーが当選するよりも、トランプが当選する方が、中国には脅威になる可能性がある。

 ●少なくとも今のアメリカのままでは、やがて中国が体力的にアメリカを凌駕することは明らかだ。

 ●ヒラリーが当選した場合は、オバマ政権後半の対中路線を引き継ぐだろう。オバマは大統領になった初期のころは親中的態度を示したが、後半になるにつれて、国内世論に配慮して対中強硬路線を取るようになった。特にロシアのウクライナ問題が発生してから激しい対露強硬戦略を始めたので、当然の帰結として中露の接近と緊密化を促す結果を招いた。中露が軍事同盟でも結んだら、アメリカはひとたまりもないはずだ。なぜならアメリカの真の同盟国は、日本一国しかないからだ。

 ●東南アジア諸国は小国が多いので、米中の間でバランスを取ったり、中国を選んでいる国が多い。ヒラリーが当選した場合は、オバマのアジア回帰(リバランス)政策を継続するだろうが、アメリカがアジア回帰で成功する可能性はない。ヨーロッパ諸国にとって、アメリカがリバランスを取ろうとしている「東アジア」は、あまりに遠い地域である。直接の利害がないので、大きな関心を払っていない。本気で追随しているのは日本だけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

日本と関税巡り「率直かつ建設的」に協議=米財務省

ワールド

再送トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措

ビジネス

FRB金利据え置き継続の公算、PCEが消費の慎重姿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中