最新記事

中国政治

習近平と李克強の権力闘争はあるのか?Part 2――共青団との闘いの巻

2016年10月20日(木)18時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 いまや文化大革命などの政治運動の時代は終わり、安定的な党員の供給源は共青団なのだ。やがて、「かつて共青団でなかった共産党員はいない」日がやってくる。その共青団をやっつけて、どうする。

昨年の軍事パレードで李克強が司会――李克強を見くだしたとする報道

「習近平・李克強の権力闘争」というメガネを通してしか中国分析ができない人々は、驚くべき情報を発信している。

 たとえば2015年9月3日の抗日戦争勝利記念日において挙行された軍事パレードの司会者が李克強であったのは「習近平への権力集中を象徴する」という分析である。

 それによれば、「過去における軍事パレードの司会は、北京市トップが務めていた。(中略)だが、(李克強)首相が司会役に成り下がったのは、習近平への権力集中を象徴する」というのである。

 この文章を書いたのは、筆者が一目を置いてきた、数少ない日本のジャーナリストの一人だ。高く評価していただけに、この文章を読んだ瞬間、彼が書くものすべてに対して信用を無くしてしまった。

 なぜ、そこまでの衝撃を筆者が受けてしまったかというと、2015年9月3日に、中国が抗日戦争勝利記念日に軍事パレードを行ったのは、中華人民共和国建国以来、初めてのことだからである。抗日戦争勝利記念日の全国的な式典自体さえ、1995年まで行なったことがない。

 北京市のトップが司会をしてきたのは、10月1日の「建国記念日」である「国慶節の祝典」だ!

 抗日戦争勝利記念日における軍事パレードではない!

 おまけに毛沢東は、1949年10月1日に中華人民共和国を建国させて以来、1959年までの国慶節においては軍事パレードを行ってきたが、1960年からはやめてしまった。

 国慶節の祝典も、「5年に一度、小規模の祝典」を、そして「10年に一度、大規模な祝典」をすれば、それで十分という指示を、1960年に発した。

 国慶節の軍事パレードが再開したのは、改革開放後、1980年代に入ってからで、国慶節の行事は「北京市共催」という形を取っている。だから、国慶節の時の司会は北京市のトップ(中国共産党北京市委員会書記)がするのである。

 現在は国慶節祝典活動領導小組というのが設立され、北京では北京市が共催し、各地方での祝典は当該地の政府が共催するという形を取っている。

 くり返して申し訳ないが、李克強が昨年9月3日に司会をしたのは、中華人民共和国建国後初めて行われた「抗日戦争勝利記念日の軍事パレード」における司会だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中