アングル:シリア医療体制、制裁解除後も荒廃 1500万人が支援必要

シリアの医療体制が荒廃していることを映し出すような首都ダマスカスのアル・モジタヘド病院の薄暗い廊下で、消化器疾患を専門とするバシャール・ハマド医師は数十人の白衣姿の研修医を指導している。写真は2024年12月に撮影された、シリアのアレッポ大学病院。空爆により施設が損壊している(2025年 ロイター/Mahmoud Hasano)
Nazih Osseiran
[ダマスカス 7日 トムソン・ロイター財団] - シリアの医療体制が荒廃していることを映し出すような首都ダマスカスのアル・モジタヘド病院の薄暗い廊下で、消化器疾患を専門とするバシャール・ハマド医師は数十人の白衣姿の研修医を指導している。
薄暗い病院内では、重要な部品が欠落している血液治療用の機械が散らかる。病室には扉がなく、床は汚れて漏水で覆われたままだ。
まるで廃墟と化した病院は、アサド前大統領の独裁体制が残忍だったことを示す遺産となった。昨年12月に追放されたアサド氏は反体制派を容赦なく弾圧し、13年間にわたって内戦を繰り広げた。西側諸国の制裁を招き、経済は壊滅状態に追い込まれ、医療体制も崩壊寸前に陥った。
国連が5月に発表した評価によると、完全に機能している病院は全体の57%、一次医療機関のうち37%にそれぞれ過ぎない。また内戦中に50―70%の医療従事者が国外に流出したと指摘されている。
シリア生まれで現在は米国に住み、ダマスカスでボランティア活動をしているハマド氏は「彼ら(アサド体制)は医師も、看護師も、設備もない劣悪な医療システムを残して国を去った」と指摘。その上で「彼ら(現地の医師)は手にしているものを考えれば、素晴らしい仕事をしている。資源が足りない。それは患者にとって安全ではない」と語った。
ハマド氏はアル・モジタヘドでは麻酔を使えることはめったになく、使えたとしても専門医ではなく一般の医師が手がけていると説明する。
本来は使い捨ての手術用カテーテル(バルーン)は使用後、手作業で洗浄されて繰り返し使用される。注射針は不潔な洗面器の中で石けんと水で滅菌される。
世界保健機関(WHO)のシリア代表代行のクリスティーナ・ベスケ氏は「シリアの公衆衛生分野は依然として危機的状況にある」とし、「シリアで最も貧しいコミュニティーが最も大きな打撃を受けている」と指摘。その上で「家族が壊滅的な医療費支出に直面し、救命医療と食料、水、教育などの他の必需品との間で選択を迫られた場合、負の対処メカニズムが生じる可能性がある」と問題視した。
一方、約400キロ離れた北東部の都市ラッカに住む小麦農家モハマド・アベドさんらにとってはそれでも国立病院が最良の選択肢だ。
アベドさんは多くのシリア人と同じように私費で治療を受ける余裕がない。ダマスカスにある国立病院のムワサット大付属病院へ行くために親族や友人から約70ドルを集め、内視鏡検査を受けた後に「他に行くところはない」と打ち明けた。
<「何かをしなければならない」>
ハマドさんはシリアでの内戦が2011年に勃発後、救援組織のシリア・アメリカン・メディカル・ソサエティー(SAMS)で活動した。アサド体制の崩壊後、ダマスカスに来るようになった。
ハマドさんは「治療を受けるお金がない人たちを助けるために、何かをしなければならないという思いがあった」と強調する。
欧州連合(EU)は5月にシリアへの制裁を解除すると表明し、トランプ米大統領は6月30日に対シリア制裁の大部分を終了する大統領令に署名した。
一方で国連によると、人口約2300万人のうち1500万人を超えるシリア人が一次または二次の医療支援を「切実に必要としている」という。
国内で約740万人が避難生活を余儀なくされ、コレラやはしかなどの疾病がまん延している過密なキャンプや非公式の居住地で暮らす。
国連の5月の発表によると、かつて反政府勢力の拠点だったシリア北西部では172の医療機関が支出削減のために閉鎖される可能性があり、北東部では23の医療機関が閉鎖され、さらに68の医療機関が閉鎖の危機に瀕する。
アル・モジタヘドの待合室に座っていたシリア北西部アレッポ県在住のアラ・アームーズさんは、腎臓病の弟が治療を受けるために来たと語った。
アームーズさんは「私たちの地域(アレッポ県)の病院には十分な設備がない。血液バッグさえない」とし、「ここでの治療の方が良い」と話した。
開胸手術が必要な夫とともに南部スワイダ県から来たエルハム・キワンさんは「スワイダにはできる所がありません。ここの医師たちは素晴らしい」と言った。
WHOは国連中央緊急対応基金(CERF)から300万ドル相当の援助を得て、シリア全土の50万人を超える患者に医療を提供する。またパートナーとともに、緊急医療キットや治療コースを医療施設や移動医療チームに提供している。しかし、あまりにもニーズが膨大なため、アイシャ・マフムードさんのような患者は苦しんでいる。
マフムードさんは腹痛と出血の治療のために何年もアル・モジタヘドに通う。だが、体調は悪く、病院の薬が切れることもある。マフムードさんは暗い病室に横たわりながらむせび泣いて「病院に薬を取りに行くお金もない」と打ち明け、「薬がなくなると、症状はぶり返す」と嘆いた。
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