最新記事

IT産業

米国テック一強時代は終わり、米中二強時代が始まった

2016年9月6日(火)17時20分
蛯原 健(リブライトパートナーズ代表)

Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグと、アリババ・グループの創業者ジャック・マー Natalie Thomas-REUTERS

 70年ほど前に半導体産業が米国西海岸で萌芽して以来、新たな技術や産業の創出を世界が米国に一貫して「アウトソース」してきた。しかしその「米国IT一強時代」がいま、終わった。
 IT産業における次代を担うスタートアップの資金調達額において、ついに中国が米国と並んだのである。

 のみならず、

・未上場企業の時価総額世界分布

・上場インターネット大手企業規模

・R&D投資額

 等の重要データにおいても中国が米国に肉薄している。以下に順番に見ていこう。

スタートアップ資金調達額

 まず昨年の米中を比べると、全米ベンチャーキャピタル業界とPwCがやっている MoneyTree 発表による両国のスタートアップ資金調達額は米国5.9兆円に対して中国は3.7兆円と米国の6割超まで肉薄していた。特筆すべきは、たったの2年前まではそれが0.5兆円弱しかなかったことである。2年で8倍弱の驚異的な成長を見せたのだ。

ebihara1.png


 さて今年である。米国の上半期は既に発表があり前年並みの3.1兆円であった。

 これに対して中国はMoneytreeからは未発表であるものの、アジアの大手テックメディアTechin Asiaからは2016年上半期が3.7兆円と発表されている。これが正しければ中国は昨年1年分を既に半年で達成し、かつ米国を抜いた、という事になる。

 しかしこのTechin Asiaの昨年データを見ると4.7兆円と上記Moneytree報告の3.7兆円より27%ほど高い。ではその割合だけ本年上半期から差し引いてみると(3.7兆円×1.27倍=)2.9兆円となり、米国上半期の3.1兆円とほぼ並んだと事となる。

 いずれにせよ正確な比較はMoneytreeの発表を待ちたいが、この他にも中国は政府による30兆円VCファンドという途方もない計画も発表していたり、トレンドとしても昨年から落ちていない事や、一方で米国は昨年4Qから足踏み状態にある事などからみても、ほぼ誤差の範囲で米中のスタートアップ投資金額は今年拮抗したと言って間違いないだろう。

 これは歴史的な瞬間である。今まで国全体のマクロ経済や軍事などと同様に、テック・スタートアップでも米国だけが世界唯一無二の突出したスーパーパワーであった、その状況が変わり米中の2大スーパーパワーが拮抗する時代となったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ産原油、割引幅1年ぶり水準 米制裁で印中の購入が

ビジネス

英アストラゼネカ、7─9月期の業績堅調 通期見通し

ワールド

トランプ関税、違憲判断なら一部原告に返還も=米通商

ビジネス

追加利下げに慎重、政府閉鎖で物価指標が欠如=米シカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中