最新記事

検査キット

尿を垂らせば病気がわかる。スマホでお手軽尿検査キット

2016年5月31日(火)16時10分
山路達也

Stanford University School of Engineering-YouTube

<スタンフォード大学の研究チームが、家庭で使えるお手軽尿検査キットを開発した。黒い箱を組み立てて、スマホの専用アプリで検査紙の結果を読み取るだけ>

 健康診断には必ず尿検査があることからもわかるように、尿からは実にさまざまな健康に関する情報を得ることができる。尿中のタンパク質や糖、血球、pHなどを調べることで、腎臓や尿路、前立腺に関する病気のほか、糖尿病、肝臓疾患等々についてもかなりのことがわかるのだ。

 情報量が豊富で患者の負担も少ない尿検査だが、病院で検査してもらおうとすると時間もコストもかかる。手軽に使える尿検査キットも販売されているが、正確な結果を得るためにはきちんとした手順を踏む必要がある。残念ながら今のところは、患者が自分で行った尿検査の結果を、医師が信用してそのまま使うことはできない。

 患者が自分で手軽に行え、なおかつ医師の診断にも使える尿検査の方法はないものか? スタンフォード大学のAudrey (Ellerbee) Bowden准教授とGennifer Smith氏はこの問題を解決するポータブルデバイスを開発した。

 新たに開発されたデバイスでも、現在使われている標準的な検査キットを使うのは同じ。検査キットは10種類の検査紙から構成されており、それぞれに尿に反応して変色する薬品が染みこませてある。

 このデバイスのポイントは、誰が検査を行っても同じ条件になるように工夫されていることにある。

 条件の1つは照明だ。検査紙の変色を正しく判別できるよう、組み立て式のブラックボックスが付属している。

 2つ目の条件は、尿の量。検査に使う尿は多すぎても少なすぎてもダメだ。そこで、研究チームは、三層からなるシステムを開発した。この三層システムを通すことで、誰がやっても同じ量の尿が検査紙に垂らされることになる。

 3つ目の条件は、検査紙を読み取るタイミングだ。組み立てられたブラックボックスの上にスマホを載せることで、専用アプリが動画撮影を行い、検査紙の結果を読み取るようになっている。

giphy.gif

 今後、研究チームではスマホで読み取った結果を直接医師に送信するためのアプリを開発する予定だという。

 低価格で簡便な尿検査を実現できれば、1日の間に複数回の検査を行って、より精密な分析を行うこともできるだろう。また、医療インフラが整っていない地域の遠隔医療にも応用できそうだ。



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

和平計画、ウクライナと欧州が関与すべきとEU外相

ビジネス

ECB利下げ、大幅な見通しの変化必要=アイルランド

ワールド

台湾輸出受注、10カ月連続増 年間で7000億ドル

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中