最新記事

テクノロジー

「スーパー人工知能」の出現に備えよ-オックスフォード大学ボストロム教授

AI倫理の第一人者が情報・インターネット分野の研究者たちに放った警告

2016年3月7日(月)17時39分
スン・リー

警戒心を怠るな 人間のように賢くしようとするあまり、リスクを忘れれば人類滅亡の危機も Philippe Wojazer-REUTERS

 サンフランシスコで開かれた世界的なRSA情報セキュリティカンファレンスは、情報とインターネットのトップ研究者が一堂にする夢のような空間だ。だがもし、25年後には人間がインターネットの管理者としての資格を失っていたとしたらどうだろう?

 オックスフォード大学の哲学教授で「人類の未来研究所(Future of Humanity Insutitute)」の創設者であるニック・ボストロムは基調講演で、人工知能(AI)を人間と同じくらい賢くしようとするあまり、その潜在的な危険性を忘れてはならない、と警告した。

「その時、AIは人間にとってもはや好奇心をそそる玩具ではなくなる」と、ボストロムは言う。「それは、人類にとって最悪の発明になる」

「無限の素質」を備えた存在が

 ボストロムはAIについて3つの予測をした。1)2050年までには、AIが人間と同じ知性を持つ可能性は非常に高い。2)人間のコントロールが及ばない超知能(スーパーインテリジェント)マシンが台頭する可能性もある。3)この超知能は、技術の力で宇宙を征服するほど、あるいは人類を絶滅させられるほどの「無限の素質」をもつかもしれない。

「無限の素質」などというとニューエイジ的に聞こえるが、ボストロムはAIに関する哲学と倫理の第一人者だ。彼のAIに対する警戒心は、電気自動車のテスラ・モーターズを創業したイーロン・マスクをはじめ、多くのシリコンバレーの天才たちにも支持されている。

 ボストロムはAI研究者たちの熱気を喜ばしく思うと同時に恐れている。例えば、グーグルの人工知能がサイケデリックな「夢」を見た、という「進化」などは、ボストロムを落ち着かなくさせる。

 ボストロムはこの状況を、ギリシャ神話のミダス王の物語に重ね合わせる。ミダス王は、手に触れるものすべてが黄金に変わる魔法を神から授かったが、食べるものまでが黄金になって飢えてしまう。「我々も、扱いきれない夢の実現を求めているのではないか」とボストロムは言う。

 ボストロムがAIの専門家を対象に行ったアンケート結果によると、2040~2050年の間に人間レベルのAIができる確率は50%と、大半が回答した。「絶滅リスク」を減らす時間はまだ数十年ある。まず備えを固めよう、とボストロムは言う。「我々が生きている間に知性をもつ機械が表れるというのは、今や主流の考えになったのだから」 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、仏の対中関税提言に反発 対抗措置示唆

ワールド

ハイネケン、最大6000人削減へ ビール需要低迷

ワールド

カタール首長がトランプ氏と電話会談、緊張緩和協議 

ワールド

欧州評議会、元事務局長の免責特権剥奪 米富豪関連捜
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 7
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 10
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中