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中国で記者が連続失踪と逮捕――背後にチョコレート少女の自殺と両会(議会)

2016年2月1日(月)15時52分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 警察3000人以上が出動し、それでも騒ぎは収まらずに、ついに蘭州軍区から3000人の武装警察が出動。大きな事件に発展してしまう。その様子を伝えた画像はほぼ削除されてしまって、今ではあまり見つからないが、その一部は「Yahoo香港」や「文学城」などの写真から伺われる。10人ほどが拘束された。

 貧乏なのだ。

 特に甘粛省やチベット自治区あるいはウィグル自治区などの辺境の地に行けば行くほど、貧富の格差は激しい。今回の暴動は、「貧富の格差」に対する民衆の怒りと全ての不平等に対する政府への怒りが、少女の自殺をきっかけに爆発したと言っていいだろう。

 このような暴動は全国各地で毎日数百件は起きている。2014年に清華大学の教授が計算したところによれば、年間18万件ほど起きているという。少し前までは、(その昔、筆者がいた)中国社会科学院の社会学研究所が統計を取っていたのだが、年間10万件を越える段階で統計作業を中止している。

 あまりに暴動が多いために、中国の治安維持費は軍事費を上回っているほどだ。

両会が始まろうとしていた

 中国には年に一回開かれる「両会」というのがある。全国レベルで言うならば、立法機関である全国人民代表大会(全人代)とその諮問機関のような役割をする政治協商会議(全国政協)の二つを指す。3月初旬に北京で開催されるが、その前に1月に入ると中国全土の行政区分レベルで開催される。

 甘粛省の場合は甘粛省政協が1月15日から19日まで、甘粛省人代が1月16日から20日まで、それぞれ蘭州で開かれることになっている。

 1月13日には中国共産党甘粛省委員会宣伝部が「両会新聞宣伝工作会議」を開催し、甘粛省の全てのメディアがこれを報道することを要求した。

 地方レベルであろうと、地方の両会から選ばれた全国両会であろうと、その期間にはいかなる「不祥事」も起きてはならない。警戒レベルは最高に達する。それが中国だ。

なぜ複数の新聞記者が連続失踪し逮捕されたのか?

 1月7日になると、「蘭州晨報」(朝刊)、「蘭州晩報」(夕刊)や「西部商報」などの記者が相次いで消息不明になったことがわかった。

 1月25日には、「ゆすり」や「脅し」を理由に3人が拘束されていたことが判明。

 3人に共通していたのは、「チョコレート少女」の追跡取材をしていたことである。もう一つの共通点は、「社会の負のニュースも報道する」という勇気を持っていたことだ。

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