最新記事

シリア

アサドやISISより多くの民間人を殺したロシア

ロシアは民間人が多い市街地を標的にしている?

2016年2月16日(火)16時00分
ダミアン・シャルコフ

「的は外さない」 2月15日にミサイル攻撃を受けたアレッポの病院。攻撃したのはロシアとも Social Media Website-REUTERS

 先月、ロシアはシリアでシリア政府軍やISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)よりも多くの民間人を殺害したことが、独立監視組織のシリア人権ネットワーク(SNHR)の報告書から明らかになった。

 SNHRはシリア各県の公務員を対象に調査を行い、死者数に関する情報を確認している。報告書によると、1月にロシアの空爆の犠牲になった民間人は679人で、うち94人が子供、73人が女性だという。

【参考記事】プーチンはなせ破滅的外交に走るのか

 この数字は、シリアのアサド大統領率いる政府軍の攻撃で命を落とした民間人の推定死者数よりも多い。

【参考記事】人間を「駆除」するアサドの収容所、国連が告発

 イスラム過激派組織のなかで1月に住民の命を最も多く奪ったのはISISで、その数は98人にのぼる。この数字は、42人を殺したアルカイダ系のヌスラ戦線よりも大きい。1月にシリアで犠牲となった住民の総数は1,382人だった。

 SNHRによると、ロシアの攻撃による死者は、主要都市アレッポやデリゾール、イドリブ、ラッカなど、紛争の激しい都市に集中している。

 SNHRは、アサド政権とロシア軍は「国際人権法の原則に違反している」と主張している。

「すべての証拠と目撃者の証言から、広範囲に及ぶ攻撃、ならびに個別の攻撃の90パーセント以上が、一般市民と民間施設を標的にしていたことがわかる」と報告書には書かれている。

 この報告書に対して、ロシア国防省は直ちに反応はしなかった。しかしロシア政府は以前から、同国の軍事行動が一般市民を巻き添えにしたことはないと繰り返し述べてきた。

 ロシア国防省の報道官で、空爆に関する記者会見を定期的に開いているイゴール・コナシェンコフも先月、ロシア空軍は「民間人の死者が出る恐れがある場合には、そのような標的に対して空爆の計画さえ立てない」と語っていた。

【参考記事】復活したロシアの軍事力──2015年に進んだロシア軍の近代化とその今後を占う

 ロシア空軍のヴィクトル・ボンダレフ上級大将は2015年12月、「ロシア空軍が一般市民に対してクラスター爆弾を投下した可能性がある」とする人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの非難をはねつけ、ロシア空軍のパイロットは「シリアにいるとき、一度たりとも的を外したことはない」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 

ワールド

米、対外援助組織の事業を正式停止

ビジネス

印自動車大手3社、6月販売台数は軒並み減少 都市部

ワールド

米DOGE、SEC政策に介入の動き 規則緩和へ圧力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 9
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中