コラム

復活したロシアの軍事力──2015年に進んだロシア軍の近代化とその今後を占う

2015年12月28日(月)21時16分

衛星画像を見ながらブリーフィングを受けるロシア軍幹部 Sergei Karpukhin- REUTERS

 2015年9月にロシアが開始したシリア領内での空爆は、ロシアの軍事的「復活」を強く印象付けた。夜間、カスピ海上のロシア艦から巡航ミサイルが炎を吐いて上昇していく姿は、冷戦後の西側に準じる域外軍事介入能力をロシアが手にしたことをビジュアルに象徴するものであったと言える。

 だが、「復活」したと言っても、現在のロシアがかつてのソ連に比肩する軍事力を持っているわけではないし、米国と正面から対抗できるわけでもない。また、依然としてソ連崩壊後の苦境を引きずっている部分も少なからずある。

 その一方、ここ数年のロシアは凄まじい勢いで軍事力の近代化を進めており、シリアへの介入はまさにその成果の一端と言える。問題はその具体的な度合いが言葉や機密の壁のために大変わかりにくいことだが、ひとつの手掛かりとして、毎年年末に行われる国防省拡大幹部会議がある。 

 ロシア軍の上級幹部が一堂に会して、国防省に対して1年間の活動成果を報告する場だ。

 ちなみに昨年以降、この会議は国防省内に新設された国家国防指揮センター(NTsUO)で実施されるようになっている。ロシア軍がシリア空爆に関して発表を行う際、巨大なディスプレイのある近未来的なシチュエーションが映っていることが多いが、これがNTsUOである。近年ではロシア軍も指揮通信システムの近代化や効率化を熱心に進めており、NTsUOはそのわかりやすい一例と言えよう。

 以下では、国防省幹部会議における報告を元に、2015年のロシア軍がどのように変化したのかを紹介してみたい。

志願兵が徴兵を上回る

 連邦法「軍事義務法」により、18歳から27歳までのロシア人男子には1年間の徴兵に応じる義務がある。徴兵は春と秋に実施され、年間を通じて大体30万人くらいが徴兵されるのが近年のパターンであった。

 だが、わずか12カ月を軍隊で過ごすだけの徴兵制では、現代の軍隊が求めるプロフェッショナルな兵士を養成することは難しい。現状でも、車両の操縦手など一定の技能職に割り当てられる兵士の養成は徴兵期間中の訓練では間に合わないため、徴兵前に陸海空軍後援会(DOSAAF)という組織で予備的な教育を受けから軍務に赴いているのが実情だ。

プロフィール

小泉悠

軍事アナリスト
早稲田大学大学院修了後、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究などを経て、現在は未来工学研究所研究員。『軍事研究』誌でもロシアの軍事情勢についての記事を毎号執筆

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国産大豆追加購入の可能性低下も 関税違憲判

ビジネス

トランプ関税違憲判決、米エネ企業のコスト軽減 取引

ワールド

米USTR、新たな301条調査開始へ 主要国の大半

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 2
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 6
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story