最新記事

Brexit

イギリス離脱を止められるか、EU「譲歩」案の中身

イギリスの国民投票を間近に控え、キャメロン英首相はEUから一定の譲歩を引き出したが

2016年2月3日(水)16時00分
ジョシュ・ロウ

きわどい残留 キャメロンはEU離脱を望む国民を説得できるか Yves Herman-REUTERS

何をみんな大騒ぎしているのか?

 イギリスはEU(欧州連合)に留まるのか、それとも離脱するのか――欧州政治ウォッチャーたちは長らく、デービッド・キャメロン英首相の交渉手腕に注目してきた。だがこれからは、一般有権者も注意を払うべきだろう。

 イギリスのEU離脱(Brexit=ブレグジット)の是非を問う国民投票を間近に控え、自身は残留を望んでいるキャメロンは、離脱派を含む有権者を説得できる有利な条件をEUから引き出したいと考えている。これに対し、ドナルド・トゥスクEU大統領は2日、イギリスを引き留めるための譲歩案を発表した。

【参考記事】EU「離脱」投票がいよいよ迫る

 具体的な提案が出たことにより、今後は離脱・残留の両派から、あらゆる批判や主張が飛び交うことになるだろう。

トゥスク案には何が含まれている?

 キャメロンは4分野でEUに改革を求めている。社会保障、国際競争力、国家主権、そしてユーロ圏と非ユーロ圏の関係である。トゥスク案は、全加盟国の承認を得る必要があるが、この4分野を全て網羅している。

 トゥスク案によれば、欧州理事会が加盟国に一定以上の移民流入圧力がかかっていると認めた場合、その加盟国は最大4年間、新たなEU域内移民に対する社会保障給付を制限できる(「非常ブレーキ」と呼ばれる)。また、EU域内における競争力を伸ばすための決議が含まれている。国家主権に関しては、加盟国議会の55%の賛成により、EUの法律を改変させるか廃案にすることができる。

 そして最後に、トゥスク案は初めて、ユーロがEUの唯一の通貨ではないと法的に認めている。

トゥスク案に含まれていないものは?

 だが、もし移民の流入圧力が減らない場合、トゥスク案で示されている社会保障の制限はいつまで延長できるのかということだ。

【参考記事】イギリスで難民の子供900人が行方不明に

 キャメロンはEU域内移民が児童手当を国外送金するのを禁止じたいと考えているが、それについては、他のEU国に手当を送付する場合は、その国の生活水準に応じて減額されるとしているだけである。

 4年間の「非常ブレーキ」にしても、EU域内移民による社会保障給付の請求を完全に封じるものではない。むしろ「段階的な」制限であり、期間を経るに従って、制限は緩んでいく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中