最新記事

中台関係

台湾民進党圧勝を中国はどう見ているか?――中国政府公式見解と高官の単独取材

2016年1月17日(日)18時12分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

総統選に勝利した民進党の蔡英文は中台関係について「現状維持」を主張するが Pichi Chuang-REUTERS

 16日の総統選挙で民進党の蔡英文氏が690万票(得票率56%)で圧勝し、同時に行われた立法院(国会。定数113)の選挙においても民進党が68議席を得て、初めて過半数を占めた。5月には台湾史上初の女性総統が誕生する。8年ぶりの政権交代だ。議会にもねじれ現象が無く、蔡英文氏の意向が通りやすい形で台湾政治は運営されていくだろう。

 1月15日付の本コラム「台湾、初の女性総統が誕生するか?――そして中国は?」では、台湾国民の心情や中国人民解放軍の元高官の発言などに関して書いた。今回は、中国政府がどう考えているのか、今後どのような行動を起こし得るのかに関して中国政府高官を単独取材した。中国政府公式見解とともに、ご紹介したい。

◆中国政府公式見解

 16日夜10時、中共中央台湾弁公室(中台弁)および国務院台湾弁公室(国台弁)の責任者は中央テレビ局CCTVおよび人民日報のウェブサイトを通して、「台湾地区における選挙結果に関する談話」を発表した。

 談話内容の概略を示す(両岸とは中台を指す中国大陸側の呼称)。

 ――この8年来、両岸双方は「九二共識(コンセンサス)」を固く守り台独(台湾独立)に反対するという大前提のもとに両岸関係の平和にして良好な交流関係を維持してきた。この方針は一貫しており、台湾地区の選挙結果に左右されることは絶対にない。いかなる形式の台独分裂活動に対しても断固反対する。われわれは、両岸が一つの中国に属すると考えている全ての政党、団体との交流を強化し、両岸の政治の基礎を守り、両岸関係の平和的発展と台湾海峡の平和安定を守り、中華民族の偉大なる復興をともに創っていく。

 筆者注:「九二コンセンサス」とは、中国大陸が言うところの「一つの中国」を原則とするが、「中国とは何か」という定義に関する解釈は台湾側が言うところの「それぞれの解釈による」とする考え方を、中国も暫定的に受け容れて中台が交流を深めること。中台双方が「共通認識」を持ったと位置づけている。

中国政府高官単独取材のQ&A

 日本からの推測で書くのは正確さを欠くので、蔡英文氏の当選が確定したあと、中国政府公式見解が発表される前の時間帯に、思い切って中国政府高官を単独インタビューした。 

 その回答を以下に記す。なお、中国では「~さん」のような敬称を付けずに人名を呼ぶので、回答をそのママ記し、敬称はつけない。筆者の説明は( )内に書く。

 Q1:蔡英文氏の当選をどう思っているか?
 
 A1:民進党は党規約に台独(台湾独立)を書いているので、蔡英文がどんなに「現状維持」と言っても、中国は信じていない。ただし、5月までは馬英九が総統なので、決定権を持っていないため、何もできないだろう。しかし陳水扁(2000年から2008年まで総統に就任)より、蔡英文の方が台独に関しては強固な意志を持っている。能力も高い。だから中国は決して安心してはいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中