最新記事

人権問題

日本の入国管理局、難民不認定者らバングラデシュ人22人を強制送還

難民受け入れが世界的な課題になるなか、多大な税金を使って強制送還する日本政府に批判の声も

2015年12月10日(木)13時19分

12月10日、法務省入国管理局は、入国管理施設に収容されていたバングラデシュ人22人をチャーター機で祖国に強制送還したことがわかった。写真は難民申請が認められず強制送還されたアブ・サイド・シェク氏。ダッカで4日撮影(2015年 ロイター/Ashikur Rahman)

 法務省入国管理局は11月25日、入国管理施設に収容されていたバングラデシュ人22人をチャーター機で祖国に強制送還した。その中に、ロイターが7月に報道したスペシャルリポートの中で取り上げた、冨士重工業<7270.T>系列メーカーで働いていた難民申請者のアブ・サイド・シェク氏も含まれており、現在同氏は、ダッカで家族と離れ、再逮捕の可能性に脅えながら生活していることが、ロイターの取材でわかった。

 同氏は2003年に来日。難民認定申請をしたが不認定とされ、収容所から仮放免されている間、自動車の内装パーツの塗装作業に従事していた。仮放免中の労働は許可されていない。

 その後は失職していたものの、2015年11月20日、仮放免を更新する手続きに行った東京入国管理局で拘束され、収容所に入れられた。24日に、難民不認定の判断に対する異議申し立てが却下されたことを知らされ、その翌日に強制送還された。

 ダッカでの裁判の資料によると、同氏はバングラデシュで、当時の野党アワミ連盟の支持者として対政府抗議活動に参加し、2002年に起こった爆発事件に関係したとして訴追された。

 バングラデシュでは、現在与党となっているアワミ連盟と、バングラデシュ民族主義党(BNP)の間で、政権をめぐり激しい対立が続いている。シェク氏への訴追は取り下げられているものの、本人が裁判所に行って判決を受けていないため、逮捕される可能性があるという。アワミ連盟は、シェク氏が党員だったことを認めている。

 ロイターの電話取材に対し、同氏は4日、「家族と一緒にいることができない。再逮捕されることを恐れている」と話した。

 法務省によるチャーター機での一斉送還は、2013年7月のフィリピン人74人、12月のタイ人46人、14年12月のスリランカ人26人・ベトナム人6人、に続き4回目。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

AIで恒久的失業、米国民7割が懸念=ロイター/イプ

ビジネス

マクロスコープ:インテル出資で孫氏「逆張りの賭け」

ワールド

中国、インドのレアアース需要への対応約束=印関係筋

ワールド

韓国大統領、サムスンなど企業幹部と会談 トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 10
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中