最新記事

外交

新冷戦下の米ロ首脳会談、プーチンとオバマの論点

昨年のクリミア併合以来急速に冷え込んだ米ロ関係に改善の余地はあるか

2015年9月28日(月)16時00分
ダミアン・シャルコフ

火花 冷戦期のような厳しい駆け引きが交わされる?(写真は2012年) Jason Reed-REUTERS

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とアメリカのバラク・オバマ大統領は今日、ニューヨークで2年ぶりの首脳会談に臨む。課題は山積だ。とくに、2014年3月にロシアがウクライナのクリミアを併合、報復として欧米側がロシアに経済制裁を課して以来、米ロ関係は冷戦後最悪のレベルまで冷え込んでいる。今回の首脳会談は、プーチンとオバマがひざ詰めで歩み寄るための稀有な機会となるのだが......。

シリア

 ロシアにとっての最優先課題は、自国の軍事基地を置き中東戦略上も重要なシリアだ。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は再三に渡りアメリカのジョン・ケリー国務長官やシリアの近隣諸国に対し、ロシアの対ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)作戦に加わるよう説得してきた。ロシアはシリア内の自国基地に補給し、シリアのバシャル・アサド大統領に追加の軍事技術を提供している。

 プーチンも、シリアのアサド政権も含めた反IS連合を呼びかけると思われるが、オバマのほうは、ロシアがシリアで軍事介入を拡大している意図を追及するはずだ。

 大統領報道官のジョシュ・アーネストによれば、オバマは会談の間一環して、アサドを支援するロシアの戦いは所詮「負け戦」で、直ちに手を引くべきだと語るだろう、という。

ウクライナ

 一方、オバマにとっての最優先課題はウクライナだ。親ロ派と親欧米派が戦うウクライナで、ロシアは親ロ派を軍事的にテコ入れしてきた。しかし今は、2月に成立した停戦合意に基づいて、今年末までにウクライナから兵を退かなければならないことになっている。

 しかしウクライナ政府によれば、停戦合意にも関わらずロシア政府はいまだに10人以上のウクライナ人捕虜を違法に拘束している。しかもロシアへの編入を望むドネツク、ルガンスク両人民共和国はウクライナ政府の意思に反してますます独立色を強めている。

EU難民危機

 中東やアフリカからの難民流入で最大の影響を受けているのはEU(欧州連合)だが、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はロシアやアメリカにも問題解決のための支援を求めている

 だがプーチンは今月、難民危機は、アメリカの中東介入政策に盲目的に従ってきたヨーロッパが自ら災難だと切り捨てた。「危機は回避できたはずだ」と、プーチンは言った。

 欧州は今、難民の負担をめぐり豊かな北東部と貧しい南西部の諸国間に分裂しつつあり、国際的な支援は待ったなしだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=

ビジネス

NY外為市場=ドルまちまち、対円では24年12月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中