最新記事

ニュースデータ

豊かな日本で「自由」を実感できないのはなぜか

2015年7月28日(火)18時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

 上記調査の対象は60カ国だが、すべての国について同じように平均点を出し、高い順に並べたランキングにすると下の<表1>のようになる。

maita20150728-graph1.jpg

 メキシコが8.44点で最も高い。2位はトリニダード・トバゴ、3位はコロンビアと、中南米の社会が続く。前述のアメリカは11位、スウェーデンは15位、ドイツは42位、韓国は47位、そして日本は下から2番目という位置だ。日本の国民が肌で感じる人生の自由度は、カースト社会のインドに次いで低い。この結果には、いささか驚かされる。

 中南米の国々は貧富の格差が大きく、階層間の移動も容易ではないはずだ。「生まれ」によって所属階層が決まる度合いは日本より高いと思われるが、それにも増して人生の多様な選択肢があり、人生の随所でやりたいことができるのかもしれない。

 対して日本は、高校卒業後に約半数が大学に進学する。新卒で就職後は、毎日オフィス勤めの生活が待ち構えている。雇用の流動性が低いため、職場を移ることには実際、様々な困難がある。起業には多大なリスクを伴う。壮年期や中年期になってから人生の転換を図るのは、それ程簡単なことではない。

 人生の自由度評点の平均を年齢別に出すと、右上がり、つまり加齢とともに自由度が増す社会が多いのだが、日本はその反対になっている。年齢が上がるほど、選択肢がなくなっていく。履歴書に年齢を記入させるなど、年齢が上がることによって雇用の機会が失われていくことにもよるだろう。

 日本の暮らしは快適で便利だが、それは人々を高度に管理・統制することで成り立っている。貧しいが自由な社会と、豊かだが抑圧の強い社会。大きく分ければ社会には2つのタイプがあり、現存する国々はこの両極の間に位置している。この統計から分かるのは、日本は後者の極点に近いということだ。こうした偏りを是正し、成熟社会にふさわしい姿に近づけていくのが理想だろう。

(出典資料:世界価値観調査

<筆者の舞田敏彦氏は武蔵野大学講師(教育学)。公式ブログは「データえっせい」

≪この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スリランカ沖でイラン船に潜水艦攻撃、数十人救助 1

ビジネス

フィッチ、インドネシア格付け見通し引き下げ 「ネガ

ワールド

中国政協開幕、軍トップ張氏ら政治局員2人が姿見せず

ビジネス

インタビュー:原子力事業の売上高、来年度に4000
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 6
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中