最新記事

自然

世界一環境に優しくないオーストラリア

グレートバリアリーフに土砂投棄、タスマニア原生林を伐採地に──アボット政権の「環境破壊」政策

2014年2月5日(水)14時55分
ジョシュア・キーティング

ゴミ捨て場? グレートバリアリーフにあるグリーン島 Bigstock

 オーストラリア政府は先日、世界最大のサンゴ礁地帯グレートバリアリーフに海底から掘削した土砂を投棄することを認可した。クイーンズランド州の石炭積み出し港の拡張工事で発生する土砂の「ゴミ捨て場」にサンゴ礁帯を選んだというわけだ。

 この決定を受けて英インディペンド紙は、トニー・アボット首相率いる現政府は「自国の環境に対して、オーストラリア史上最も優しくない」政権ではないかと報じた。だがアボット政権の最近の動きを見ていると、オーストラリアどころか「地球の環境」に対して最も優しくない政府かもしれない。

 グレートバリアリーフへの土砂廃棄の決定は国際社会から厳しい目を向けられているが、アボット政権のこれまでの環境政策を考えれば順当ともいえる。昨年9月に政権の座に就いて以来、アボットは環境保護にかかわる政府機関を既に3つも解体している。さらに科学担当大臣をまだ任命していない。

 アボットは以前、「地球温暖化論は完全にたわごとだ」と発言したことでも知られる(後に撤回)。彼は前政権時代に可決された炭素税の廃止を公約に掲げて、昨年の総選挙を戦った。二酸化炭素の排出に課税する炭素税の廃止が「議会における最優先事項だ」と訴えた。

 アボットはまた、タスマニア原生林の一部、7万4000ヘクタールを世界遺産登録から解除してほしいと国連に求めている。理由は木材の伐採地として利用したいからだとか。

 サンゴ礁を犠牲にする石炭積み出し港の拡張工事には、中国やインドへの石炭輸出を拡大するという思惑がある。

 オーストラリアが地球環境におよぼす影響は、中国やアメリカほど大きくはないかもしれない(ただし国民1人当たりの二酸化炭素排出量では2国を上回り、欧米諸国の中では最大レベル)。とはいえ、ここまで環境に対して微塵も優しさを見せない政府は世界のどこにもいないだろう。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中