最新記事

軍隊

スイス国民が徴兵制を望んだ理由

国民投票で圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対して政府はひと安心

2013年10月9日(水)13時09分
アレクサンダー・ベサント

中立のコスト? とくに外国の脅威もないのだが Arnd Wiegmann-Reuters

 永世中立の小国スイスは、人口800万人にもかかわらず、15万人という大規模な軍隊を持つ。19〜34歳の男性全員に兵役を課す国民皆兵制を国防の基盤としてきたためだ。

 だが他国の脅威にさらされているわけでもないのに、莫大なコストが掛かる徴兵制を続けるのは時代遅れだとの批判が噴出。先週、徴兵制の是非を問う国民投票が実施された。

 結果は有権者の73%という圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対し、26州すべてで廃止反対派が勝利。今後も一部の職業軍人ではなく、国民全体で国防を担うとの意思が示された。

 国防能力が損なわれるとして徴兵制撤廃に反対していた政府も胸をなで下ろしている。マウラー国防相は「軍隊と安全保障の強化に対する信任だ」と語り、来年予定されているスウェーデン製戦闘機グリペン22機購入の国民投票に意欲を見せた。

 国民投票を呼び掛けた平和団体「軍隊なきスイスを目指す会」も、この結果を予想していたようだ。「軍隊はスイス人のアイデンティティーの一部。事実より(感情が)勝るものだ」と、広報担当者は語っている。

[2013年10月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン「報復の選択肢検討」、ホルムズ海峡封鎖か 米

ワールド

イラン議会がホルムズ海峡封鎖承認と報道、最高評議会

ワールド

イラン核施設3カ所に甚大被害と米国防総省、「体制転

ワールド

ロシアと中国、米のイラン攻撃を強く非難 対話呼びか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 2
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中