最新記事

ロシア

空港のトランジットエリアの住み心地は?

モスクワ・シェレメチェボ空港に潜んでいるといわれる元CIA職員スノーデンの暮らしぶりは

2013年7月3日(水)17時50分
ブライアン・パーマー

政治エリア お尋ね者のハッカーが到着したときにも活躍するトランジットエリア(シェレメチェボ空港) Sergei Karpukhin-Reuters

 アメリカの国家安全保障局(NSA)によるネット監視を暴露したエドワード・スノーデンはモスクワのシェレメチェボ空港の「トランジット(乗り換え)エリア」に留め置かれているという。だが、彼を目撃した記者がいないのはなぜなのか。またそこでの暮らしはどんなものなのか。

 普通に知られるトランジットエリアはホテルやレストランなど便利な施設に溢れた表の顔だ。シェレメチェボ空港のトランジットエリアにもカプセルホテルやシティホテル、バーガーキングやシナモンロールの名店がある。

 だが、旅客の目に触れづらい特別区域もある。それが待機室だ。国際空港にはこうした空間があり、難民や在留資格が疑わしい人が入国許可か強制送還を待っている。人権団体は東ヨーロッパの空港の待機室施設が世界最悪レベルだと告発する。難民であふれる待機室にベッドが不足し、20人ごとにトイレが1つだけ。航空会社は通常、待機者を世話する義務を負うが、食事や薬をけちる会社もあるという。

 外部との連絡は制限され、ブルガリア、ルーマニア、スロバキアなどの空港の場合、難民は弁護士との面会や庇護申請の機会が一切与えられないことも多い。待機室が施錠されている場合もあれば、待機者が空港内を歩き回れる場合もある。シェレメチェボ空港では待機者は最長で20カ月ほどトランジットゾーンに滞在している。最も有名な例では、フランスのドゴール空港で17年間住みついたイラン人難民がターミナルを自由に歩き回っていた。

 もっとも、スノーデンが本当に待機室でいらいらしているか快適なホテル住まいをしているかは、ロシア当局次第だ。

 なぜなら、トランジットエリアの定義があいまいだからだ。例えばフランスのドゴール空港では、空港から30キロ以上離れた病院や裁判所も法的にトランジットエリアとされ、待機者は自由に行き来できる。つまりエリアの線引きは当局の裁量に委ねれらている。

 スノーデンがホテルにも待機室にもいないとすれば、空港から遠く離れた場所をロシア当局がトランジットエリアに指定してかくまっていた可能性もある。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン議会、IAEAとの協力停止法案承認 査察など

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃の成果誇示 核開発数十年遅ら

ワールド

IAEA事務局長、イラン核施設への査察再開が最優先

ビジネス

フジ株主総会、会社提案の取締役11人全員承認 ファ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 4
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 9
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中