最新記事

領有権問題

沖縄だけじゃない、中国の果てなき領土エゴ

2013年5月13日(月)18時21分
J・バークシャー・ミラー(米戦略国際問題研究所太平洋フォーラム研究員)

挑発を続ければ不利に

 中国が国境をめぐって北朝鮮と対立を続けるのは、中朝国境条約が条約というより枠組みにすぎず、国境を包括的に画定するものではないからだ。

 中国と北朝鮮が白頭山以外の極東の国境線をめぐっていまだに対立していることも、問題を複雑にしている。北朝鮮は、白頭山を源として中朝国境を流れる豆満江沿いの17キロにわたってロシアとの「戦略的国境」を維持している。ロシアと中国の国境沿いに食い込んでいるこの細長い北朝鮮領が、中国の日本海へのアクセスを事実上遮断する形になっている。

 ロシアと北朝鮮は昨年7月に包括的な国境管理通行条約に署名し、国境問題は既に解決している。両国の間では、シベリアから朝鮮半島を経由する天然ガスパイプライン構想があるだけになおさら、条約締結は極めて重要な意味を持つ。

 中国は今のところ白頭山一帯の主権をめぐる交渉に乗り気ではない。それは今後も変わりそうになく、むしろ現状を維持しようとしている。北朝鮮には中国の前進を覆す力はほとんどないと踏んでいるからだ。しかし、日本との領有権問題をめぐって愛国主義が高まっている韓国の状況を考えれば、中国がそうした政策を取り続けることは次第に難しくなるかもしれない。

 過去1年間、抗議や外交問題での非難の応酬や海上での小規模な衝突が相次ぐなかで、世界の注目は東シナ海と南シナ海に集まっている。中国のライバルたちは、中国が抱える数多くの領有権問題と、その解決をめぐる挑発的なアプローチを引き合いに出して、中国はアジアにおける平和的な当事者ではない、と指摘し続けるはずだ。

 それがフェアであろうとなかろうと。

From the-diplomat.com

[2013年1月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルおおむね下落、米景気懸念とFRB

ビジネス

ステーブルコイン普及で自然利子率低下、政策金利に下

ビジネス

米国株式市場=ナスダック下落、与野党協議進展の報で

ビジネス

政策不確実性が最大の懸念、中銀独立やデータ欠如にも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 9
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中