最新記事

交通

春節もヤバい?北京を襲う渋滞パニック

2013年1月28日(月)14時18分
スティーブ・フィンチ

大気汚染も過去最悪に

 調査会社LMCオートモーティブの試算によると、ナンバープレート割当制の影響で昨年の新車販売台数の伸びは4・6%に減速したが、今年は9%近くまで回復する見込みだ(新車販売台数は約1950万台)。各メーカーは新車販売台数の記録を更新する勢いを見せている。

 GMは9月21日に今年の中国での販売台数が200万台を突破。「中国進出以来、年間200万台を超えるのはこれで3回目で、今回が最速記録だ」と発表した。

 排ガスをまき散らす旧式の車から新車への買い替えは、環境と人々の健康を考えれば望ましいはずだ。しかし、大気汚染が改善する兆候はまだない。

 北京のアメリカ大使館は肺や心臓に有害な直径2・5ミクロン以上の粒子状物質を計測しているが、今年は過去最悪の数字だった。WHO(世界保健機関)の統計によれば、北京の大気汚染は世界の首都の中でワースト10、中国の都市ではワースト5だ。この統計は中国政府発表の数字を使っているので、実際はもっと深刻だという説もある。

 ちなみに中国で最も大気汚染がひどいのは甘粛省の省都・蘭州。94年にナンバープレート割当制を導入した上海はクリーンな都市ベスト10に入っている。

自転車に戻るしかない?

 北京市当局は今年、公害対策を最優先課題にすると発表したが、共産党に忠実なチャイナ・デイリーでさえ「市はこの課題に立ち向かう準備がまったくできていない」と報じている。

 大気汚染物質の排出が少ない電気自動車(EV)とハイブリッド車の購入には補助金が出るが、需要は振るわない。そこで政府は北京で両者をナンバープレート割当制の対象外とし、来年は官公庁でEVを試験的に導入する。一方で、北京市は地下鉄の路線延伸と新駅建設を猛スピードで進めている。

 自転車の復活にも力を入れている。80年代には北京市民の80%が日常的に自転車に乗っていたが、10年には20%未満に減少。市当局は市内各所にレンタル自転車を配置し、15年までにこの数字を23%まで増やす計画だ。

 とはいえ最大の問題は、高価な大型車を買って経済的地位を誇示したがる中国人が多いことだと、クリーンエネルギーによる交通政策に詳しい調査会社パイクリサーチは指摘する。

「中流、上流層の多くはアメリカ車やドイツ車を好む」と同社のリサーチ・ディレクター、ジョン・ガートナーは言う。「渋滞する道の運転は運転手に任せ、大型セダンの後部座席にゆったりするのが好きなんだ」

From the-diplomat.com

[2012年10月31日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

景気一致指数3月は前月比1.3ポイント低下、4カ月

ワールド

中国レアアース輸出、4月は前月比-15.6% 輸出

ビジネス

NTT株主、分割効果で268万人に大幅増 20代以

ワールド

中国外務次官、米国との貿易問題管理に自信 「恐れは
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中