最新記事

生命倫理

ベルギーの双子が安楽死を選んだ理由

双子の兄弟が命には関わらない障害を苦に安楽死したことで、自殺ほう助ではないかと議論が再燃

2013年1月15日(火)16時58分
ファイン・グリーンウッド

最期のとき 2人は薬物注射を受けて一緒に亡くなった Bigstock

 生まれつき耳が聞こえなかったベルギーの45歳の双子の兄弟が、昨年12月に安楽死を選択していた。
 
 兄弟が同時に自殺ほう助による死を選んだ最初のケースだ。さらに2人とも極度の痛みに苦しんでいたわけでも末期患者でもなかったため、ヨーロッパでは安楽死の是非について議論が再燃している。

 聴覚障害のあった双子、マークとエディー・バーベッセムは、病で視力も失うことが分かってから安楽死を依頼できる医師を探し始めた。お互いの顔を見られなくなってしまうことが耐えられなかったからだという。

 彼らの願いに手を貸した医師デビッド・デュフールによれば、2人は穏やかな最期を迎えたという。「コーヒーを飲みながら両親やきょうだいと最後の会話を交わしていた。その別れはとても平穏で美しかった。2人は最後に小さく手を振ってさよならをした」と、デュフールはドイツの地元メディアに語った。
 
 ヨーロッパではベルギーのほかにスイス、オランダ、ルクセンブルクで安楽死が認められている。一方、イギリス政府は安楽死と自殺ほう助を法的に異なるものと定義。安楽死は「苦しみを取り除いてあげるために人の命を故意に終わらせる行為」であり、自殺ほう助は「自殺を図ろうとしている人を故意に助けたり促そうとする行為」だという。

 ベルギーでは02年、成人で判断能力がある場合に限るなど特定条件の下で、安楽死が合法化された。さらに昨年12月には社会党政権が認知症患者や子供にも安楽死を認めるという改正案を提出し、物議を醸している。改正の目的について同党は「耐え難い苦痛を伴っているケースなどに、より柔軟に対応できるようにするため」としている。

 ベルギーでは2011年に1113人が安楽死を選択。うち91%は「死期が近い」と診断された患者だった。


From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

関税引き上げ8月1日発効、トランプ大統領「複数のデ

ワールド

BRICS首脳会議、ガザ・イランへの攻撃非難 世界

ビジネス

日産、台湾・鴻海と追浜工場の共同利用を協議 EV生

ワールド

マスク氏新党結成「ばかげている」、トランプ氏が一蹴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中