最新記事

サウジアラビア

「車運転でむち打ち」を覆した国王の本音

女性には参政権もなく車の運転もできないこの国が、「アラブの春」の次のターゲットになる?

2011年11月8日(火)15時31分
山田敏弘(本誌記者)

新しい意識 権利拡大を求める女性たちのデモも拡大している Reuters

 戒律の厳しいイスラム教ワッハーブ派の影響が強いサウジアラビアで、女性の車の運転は禁じられている。先週、車を運転した30代の女性にむち打ち10回の刑が言い渡されたが、この有罪判決が翌日、アブドラ国王自らによって取り消された。

 この女性は7月に南西部ジッダで車を運転していて逮捕された。サウジアラビアでは最近、女性の権利を拡大しようとする運動が起きている。むち打ちの判決は、裁判所を支配している宗教保守勢力によるこの運動への報復だと、人権団体は批判していた。アブドラは判決の前日にも、4年後に行われる予定の地方議会選から女性の参政権を認めると発表したばかりだった。

 改革派と言われるアブドラだが、その柔軟姿勢の背景には、チュニジアに端を発した中東諸国の民主化運動「アラブの春」がある。サウジアラビアではエジプトやリビアのような反体制派との武力衝突は発生していないが、女性たちが権利拡大を求めるデモを繰り広げている。

 民主化運動がこれ以上国内で高まるのは困る──アブドラの柔軟姿勢は、そんな警戒心ゆえとみられている。

[2011年10月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=

ワールド

EU、27年までのロシア産ガス輸入全面停止へ前進 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的、と元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中