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ギリシャで義務化、墓の「使い回し」

最長3年の期間限定、後は墓を掘り返して遺骨を処分——そんな強引な制度の裏には「欧州の伝統」も

2011年6月6日(月)13時33分
アレックス・マー

仮の住まい ギリシャでは墓所のレンタル期間が終われば改葬を迫られる Yiorgos Karahalis-Reuters

 長い年月をアメリカで過ごした祖父母が、生まれ故郷のギリシャに戻ったのは90年代のこと。2人はアテネで余生を過ごし、葬儀も現地の教会で執り行われた。このときは先進国であるはずのギリシャで、政府の政策によって祖父母の墓が蹂躙されることになるとは、一族の誰も予想しなかった。

 ギリシャ正教会の教えでは、遺体は魂が宿る場所だと考えられており、復活を可能にするためにそのままの姿で土葬される。だが土地不足を背景に、ギリシャ政府は墓所の「リサイクル」を義務化。永代使用が可能な墓地もまだ残ってはいるが、1区画が最高で15万ユーロもする。そこまで金が出せない場合は、最長3年の契約で墓を「レンタル」するしかない。

 法律によれば、レンタル期間が終了すると遺族の立ち会いの下、霊園の係員(聖職者は来ない)が墓を掘り返し、ひつぎから遺体を取り出すことになっている。遺骨は靴箱くらいの大きさの容器に押し込まれ、共同の納骨堂に納められる。

 墓地不足の解消には火葬も有効だ。しかしそれは異教徒の習慣であり、死者の復活を妨げるという教会の見解によってギリシャでは違法とされていた。06年に合法化されたが、今のところ火葬場は1カ所も造られていない。

中世から続くリサイクルの伝統

 祖父母の墓を掘り返した際には、遺骨を靴箱に入れる以上にひどい事が起きた。アテネに住む父方のおばが立ち会いを拒んだため、遺体は集団墓地に運ばれ、揚げ句の果てに化学薬品で溶かされてしまった。驚いたことに、これは決して珍しい話ではない。納骨堂の使用料の支払いが滞った場合も、遺骨は処分されてしまう。

 アメリカにいる私たち家族は、この知らせを聞いて深く悲しんだ。死者をこんなふうに扱うなんて何て野蛮な、と。

 だが実はこうした墓地の再利用は今に始まったことではない。中世ヨーロッパでは、貧しい人々は教会の敷地内の共同墓地に葬られ、一定期間がたつと遺骨は納骨所に移された。教会の建物の中に葬られた富裕層の遺骨も同じだ。

 19世紀に入る頃には公衆衛生上の見地から、パリやロンドンのような大都市では墓地を教会の敷地内ではなく、市街地から離れた場所に造るようになった。特にフランスやイタリアでは多くの墓地の区画が10〜50年単位で貸し出された。期限が来ても契約が更新されなかった場合は、遺骨は納骨堂に納められ、墓所はリサイクルされた。

国によって違うタイムリミットと埋葬法

 こうした墓地の使い回しは、今でも欧州の一部で続いている。イタリアやフランスでは、必要な場合には墓を掘り返して遺骨を納骨堂に移すことが法律で認められている。ただし改葬までの期間はギリシャよりずっと長いし、やり方も強引ではない。

 スウェーデンでは埋葬後25年たった墓ではひつぎを深く埋め直し、その上に新たなひつぎを埋めることが定められている。イギリスでは埋葬後100年以上たった墓に限り、同じ手法を取ることが認められている。

 アメリカでは土葬、火葬、霊廟にひつぎを安置する、の3つが主な埋葬方法だが、15年までには火葬が46%を占めるようになるという。イギリス同様、アメリカ人も墓を「永遠の安息の地」と捉えており、78年の連邦最高裁の判決によれば、よほどの理由がない限り埋葬された遺体に手を出してはならない。

 さまざまな国の埋葬事情を見てくると、ギリシャの真の問題は墓を掘り返すことの是非ではなく、選択肢がないことではないかと思えてくる。幸い、近いうちに選択肢が1つ増えそうだ。つい最近、アテネでギリシャ初の火葬場の建設の認可が下りたのだ。

 だが私たち家族には、祖父母の記憶のよすがにすべき場所はもうない。そこで私たちは母の一族が眠るニューヨークのトリニティー墓地の区画を買うことにした。遺骨の代わりに遺品を納めることになるかもしれない。仕立屋だった祖父の仕事道具とか祖母の毛皮のストールとか、生前に毎日使っていたものを。

 墓とは大切な家族の思い出を思い返すための場所にほかならない。その思い出は壊すことも溶かすこともできない。

© 2011 WashingtonPost.Newsweek Interactive Co. LLC (Distributed by The New York Times Syndicate)

[2011年4月27日号掲載]

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