最新記事

東アジア

嫌われる大国、中国の正体

世界が理解に苦しむ中国の正体は「草を大量に食べるだけの優しい象」か「遮る者を踏みつぶしながら突進する巨象」か

2011年5月25日(水)07時29分
ジョナサン・アンズフィールド(元本誌北京特派員、現ニューヨーク・タイムズ北京支局記者)

異形の大国 急成長する中国の真意を世界が計りかねている(湖北省武漢市の毛沢東像) Reuters

 2010年は中国にとって「厄年」だった。1月に中国政府の検閲に抗議したグーグルの撤退で世界からバッシングを浴び、上海万博の開幕直前に青海省を大地震が襲い、深センのiPhone工場では労働者の自殺が相次いだ。

 9月には尖閣諸島で中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船と衝突。領有権をめぐる外交問題に発展し、各地で反日デモが起きた。その後、中国政府が拘束している民主活動家、にノーベル平和賞が贈られ、世界から再び中国批判が起きた。

「中国は身勝手だ」と世界は考えている。世界第2位の経済大国なのに、思いどおりにならなければ怒りをあらわにし、協調性のなさを批判されると「まだ途上国にすぎない」と言い逃れする。

 数年前まで、世界は中国が責任ある国へと成長することを期待していた。08年の北京五輪という大事業をやり遂げた中国政府は、その直後に起きた世界金融危機も見事に乗り切った。この2つの試練を乗り越えたことで、中国共産党の支配基盤は盤石になったはずだった。

 だが既得権益層である党のエリート官僚は、現状の支配体制の強化を続けている。自らの支配体制が崩れることを恐れる彼らは、人民元の切り上げや対北朝鮮制裁への参加、人権問題の改善に消極的で、欧米の圧力にも頑として応じない。

 圧倒的存在感と、金融危機で世界中に不景気風が吹いても2桁近い成長を維持した経済力は、好むと好まざるとにかかわらず中国を超大国アメリカと並ぶ「G2」の一翼に押し上げた。

 しかし世界はまだその正体を知らない。これまで中国の目覚ましい台頭は、伝説上の動物である竜に例えられてきた。だが最近はもっとありふれた普通の動物に例えられている。...本文続く

──ここから先は5月25日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年6月1日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

特集は創刊25周年記念第3弾「中国の正体」。選りすぐりニュース100本と在北京アメリカ人ジャーナリスト、本誌コラムニストの論考から「不可解大国」の本質に迫ります。
■米中「世紀の対決」回避への知恵
■21世紀になってもいまだに奴隷労働がある
■上海はなぜ世界の金融センターになれないか、ほか

他にも
■IMFトップ暴行疑惑、その一部始終
■「自殺幇助は合法」スイスの流儀
■菅政権「東電解体論」の場当たり度、など
<最新号の目次はこちら

[2011年6月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中