最新記事

中東

フェースブック解禁、シリアの真意

中東でもとりわけ閉鎖的とされる国が、今あえてネット規制解除に踏み切ったのはなぜか

2011年2月14日(月)17時13分
サークル・アル・マカディ(シリア)

余裕たっぷり? 高い支持率を誇るアサド大統領にとってはエジプトの騒乱も対岸の火事か(写真は07年の再選時の首都ダマスカスの様子) Khaled al-Hariri-Reuters

 チュニジアで独裁政権が倒され、エジプトでもムバラク政権が崩壊した激動の中東で先週、シリアが思いがけない行動に出た。国民のインターネットアクセスを制限する規制の多くを解除したのだ。

 シリアはこれまで、国境なき記者団に「インターネットの敵」と評されるほど厳しいウェブ閲覧制限を課してきた。フェースブックもユーチューブもアラビア語版ウィキペディアも閲覧を禁じられ、アクセスできないブログも多かった。

 大半のネットカフェではアクセス制限を回避するための中継サーバを設定しているが、シリア在住のブロガー、アナス・クティエシュに言わせればウェブ環境は耐えがたいレベルだ。「毎日フラストレーションでいっぱい」と、クティエシュは言う。「(中継サーバも)100%確実ではないし、ただでさえ遅い通信速度がさらに遅くなる。いまだにダイヤルアップ接続を使っている大多数のシリア人にとっては、迂回ツールを使って大容量のマスコミサイトにアクセスするなんて不可能に近い」

エジプト危機の前に規制解除を決めた?

 チュニジアやエジプトの情勢を受け、シリア政府はネット規制をさらに強化するだろう、というのが大方の予想だった。ところが実際は正反対。「シリア政府を批判する者への明確な挑戦状だ」と、シリアの政治経済ニュースを扱うシリアコメント・ドットコムの創設者ジョシュア・ランディスは言う。
 
 仮にこれがシリアのイメージ戦略の一環だとしたら、リスクの高い賭けだ。2月4、5日にはフェースブックを通じた呼びかけで、国会前での抗議デモが計画されたばかりだ(結局は不発に終わったが)。

「フェースブックの使用を許可する決定が下されたのは、エジプトのデモ勃発以前だった可能性がある」と、ランディスは言う。「いったんはフェースブックが利用できるようになったが、その数日後に方針が撤回されたようだ。チュニジアとエジプトの騒乱を見て、当局が不安を抱いたのだろう。しかしその後、(反体制派が企画した)デモが起きなかったので、政府は当初の方針通り、フェースブックの利用を認めることにしたのだろう」

 シリアは中東でもとりわけ閉鎖的な国と評されるが、実際は宗教的にも社会的にもリベラルな世俗国家で、国家元首の人気も高い。バシャル・アサド大統領は、亡くなった父親の後を継いで、2000年に34歳の若さで大統領に就任。ピュー・リサーチセンターが09年に行った世論調査では、中東の国家元首で最も国民の人気が高かった。

「大統領がダマスカス市内のレストランに突然現れたり、ボディーガードなしでパリの街を歩いたり、自分で車を運転して出かけたりするのは、彼が国民を恐れておらず、国民に慕われていると示すためだ」と、ランディスは指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「NATO大半が対イラン作戦に不参加」、

ワールド

イラン交戦で新たに4500万人が飢餓の恐れ、WFP

ワールド

仏、敵対行為中は不参加 ホルムズ海峡護衛任務=大統

ワールド

ロシア、キューバへの「揺るぎない連帯」表明 内政干
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    生徒がいない間に...中学教師、教室でしていた「気持…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中