最新記事

北極

シロクマ危機だけで北極を語るな

2009年12月28日(月)11時00分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

 地球温暖化により北極の氷が減少していることで、ホッキョクグマの絶滅危機や将来的な環境のリスクに注目が集まっている。だがニュー・サイエンティスト誌の元編集長アルン・アンダーソンは新著『氷の後』で、遠い未来に目を奪われると現在の地政学的な現象が見えなくなると指摘する。

 まず氷の減少は、世界の海上交通路と国家安全保障に変化をもたらした。さらに北極海の底に眠る石油や鉱物などの天然資源の分配も新たな問題となる。国連の海洋法に関する条約では、大陸棚など地質学的データに頼った曖昧な境界しか設定されていない。

 最も重要なのは、北極における人間の活動をどう管理するかという視点がこれまで欠けていたことだという。もしも陸地から遠く離れた北極の油田で原油が流出したら浄化作業は困難を極めるだろうし、客船が北極の氷山に閉じ込められれば救助は間に合わないかもしれない。北極の気候と隔絶された環境を考えれば、商業・軍事活動の拠点となる施設を建設するなどの大規模な開発は不可能だ。

 それでも北極の未来は真っ暗ではない。まず新航路はこれまでよりも燃料を節約できる場合もある。第2に、ホッキョクグマは絶滅するかもしれないが、海水や日光の増加などで、生物にさらなる多様性が生まれる可能性もある。

[2010年1月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米軍、数週間の対イラン作戦に備

ワールド

アングル:インド進出を加速する英大学、移民抑制受け

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中