最新記事

サイエンス

高い知能をもつ「恐竜宇宙人」の謎

アメリカの最新の化学論文が唱える地球外生命体の驚くべき正体とその根拠とは

2012年4月12日(木)17時51分
アレクサンダー・ベサント

生命の神秘 絶滅せずに生き延びたら、高い知能を身に付けていたかも Phil Noble-Reuters

 一般人の興味をそそるような科学論文はめったにない。

 米国化学会誌(JACS)に掲載されたコロンビア大学のロナルド・ブレスロウ教授の論文「前生物的な地球上のアミノ酸、糖、ヌクレオシドにおけるホモキラリティーの推定起源の証拠」はいかにも難解で、化学分野で博士号を持たない人にはちんぷんかんぷんに思える。

 だが論文は最後に論調が変わり、私たちの想像力をかき立てる。ブレスロウはほかの惑星に人類と同等、もしくはそれ以上の知能を持った生きた恐竜が存在するかもしれないと推測する。

 SF科学情報サイトiO9によれば、論文の最後は難解にこう始まる。「この研究から推測できるのは、宇宙のどこかにD-アミノ酸とL-糖が基になった生命体が存在する可能性があることだ。それには、該当の宇宙領域における円偏光のキラリティー(対掌性)や、地球に墜落した隕石に含まれるメチルアミノ酸が優位になる何らかの作用が関係する」

 ブレスロウ自身の言葉で翻訳しよう。「地球の哺乳類は、小惑星の衝突で恐竜が絶滅するという好運に恵まれた。そうでなければ、生き残るのは進化した恐竜のようなものになるはずだ。それは、人類が決して遭遇したくない類の生命体だ」

『スタートレック』の話もありうる?

 情報サイトのTGデイリーによれば、ブレスロウの論文はもっと重大な話題にも言及している。地球上のアミノ酸や糖、遺伝物質のDNAやRNA(リボ核酸)の分子構造はなぜたった一つの形状で、右手型・左手型の違いしかないのか、という謎についてだ。

 この謎は、生命そのものの起源にまで遡る。

 ブレスロウが賛同する理論の1つは、数十億年前に隕石が特定のアミノ酸を地球に「植え付けた」というものだ。

 したがって、スミソニアン誌電子版によれば、地球上の植物と動物の進化はそれぞれのアミノ酸の特性によって制限された可能性がある。

 つまり、ほかの惑星では、地球の生物と正反対の生化学的な順応が起きた可能性があるということだ。

 これは単なる推論だ。しかし『スタートレック』に登場する「恐竜から進化した宇宙人」を、荒唐無稽と一蹴することはもはやできなくなった。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ガザ暫定統治機関の人選を来年早々に発表

ワールド

トランプ米政権、UNRWAに制裁検討か テロ組織指

ワールド

米国防権限法案、下院で可決 上院も来週通過の見通し

ワールド

トランプ氏「CNNは売却されるべき」、ワーナー買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中