最新記事

アメリカ社会

ウォール街デモと世論の危険なギャップ

反格差デモの参加者は過激な左派的政策に深く傾倒していると結論づけた調査が話題を呼んでいるが

2011年10月20日(木)11時58分
デービッド・ケース

見えない本質 アメリカ国内外で急拡大するウォール街占拠運動は明確な目的や主張がないと見られてきたが(ニューヨーク、10月15日) Eduardo Munoz-Reuters

 ウォール街占拠運動はアメリの世論と「危険なほどかけ離れて」おり、米民主党が彼らを支持すれば自らを危険にさらしかねない――ウォールストリート・ジャーナル紙の電子版では今、そんな論説が注目を集めている。

 この記事は、民主党が反ベトナム戦争運動を支持し選挙でひどい結果を招いた70年初期と、最近の状況を比較した挑発的な内容。最近になって、バラク・オバマ米大統領やナンシー・ペロシ前下院議長、オバマの顧問デービッド・プラウフはウォール街占拠運動に同情的な姿勢を示している。

 記事の著者は、かつてビル・クリントン元米大統領の選挙陣営で世論調査を担当した政治コンサルタンのダグ・ショーン。彼が営む世論調査会社は200人近いデモ参加者にインタビューを実施。その結果、「デモ参加者たちは独特のイデオロギーを持ち、過激な左派的政策に深く傾倒している」と結論付けた。以下が一部の抜粋だ。


 年齢、社会経済的地位、教育レベルに限らず大部分のデモ参加者を結びつけているのは、過激な左派的政策への深い傾倒だ。自由市場資本主義に反対する一方で、過激な富の再分配や民間セクターへの規制強化、そしてアメリカの雇用を守るという保護主義政策を支持している。


  ショーンは以下のような数字を挙げてこの結論を導いた。注意深く読んで欲しい。計算と結論に納得がいくだろうか。

■デモ参加者の98%は目標達成のための市民的不服従を支持する
■3分の1近くが、目的に向けて前進するためなら暴力も支持する
■65%が国民皆健康保険を支持している
■77%が富裕層に付加税を課すことを支持している
■無職の参加者はわずか15%
■驚いたことに、半数近くが銀行への救済措置は必要だと考えている

 一方で、ナショナル・ジャーナル誌は最近、ウォール街占拠運動が世論とかけ離れているという主張に矛盾する世論調査結果を掲載した。同調査では、成人回答者の59%近くがデモ参加者たちを『全面的に支持』もしくは『ほぼ支持』と答えた。一方で、『全面的に反対』あるいは『ほぼ反対』と答えた人は31%ほどだったという。さらに興味深いのは、成人の68%が富裕層に付加税を課すことを支持していること。この数字は、ショーンがデモ参加者に行った調査結果に比べて9ポイント低いだけだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中