最新記事

中間選挙

最後まで分からない!票集めの科学

投票率に影響を及ぼす要素は景気から中傷広告、天気までさまざま。今回の選挙で何が有権者のムードを左右するのか科学的に徹底分析

2010年11月1日(月)16時50分
シャロン・ベグリー(サイエンス担当)

揺れる一票 不況時は国民がいら立ちや不安を与党にぶつけたがるので投票率は上がるものだが、今回の選挙では未知数 Larry Downing-Reuters

 11月2日の米中間選挙で逆転勝利を願う民主党に、予備選は厳しい現実を突き付けた。問題は誰が勝ったかではなく、誰が投票したかだ。

 中間選挙で民主党が上院でも下院でも過半数を保つには、08年の大統領選でバラク・オバマに投票した有権者のほとんどを動員しなくてはならない。ところがアメリカン大学有権者研究センターによると、今回の予備選では、投票した有権者3380万人の過半数が共和党員で、民主党員を380万人上回った。

 予備選の投票率で共和党が民主党を上回ったのは1930年以来のこと。民主党予備選の投票率は8・2%で、史上最低だった06年の9%を下回っている。

 民主党には不吉なデータだ。08年の選挙では普段あまり投票しない層が民主党の躍進に貢献したが、今回は関心が薄いように見える。今回の共和党の投票率が史上最高だったのは「共和党の勝利を予感したことによる投票率の上昇も一因」だと、有権者研究センターのカーティス・ギャンズ所長は言う。

投票率が低いと共和党に有利

 景気後退の投票率への影響も、今回は共和党の追い風になりそうだ。ギャンズによれば、不況時は「人々がいら立ちや不安を与党にぶつけたがり」、普通なら全体の投票率は上がる。だが現在の景気後退はあまりに深刻で長期化し過ぎており、「投票率を上げるとは言い切れない」。

 そうなると共和党が有利だ。投票率が平均より高いか低いかは、普段あまり投票しない層が投票するかどうかによる。アメリカン大学のジャン・レイリー教授によれば、所得と学歴が高い人ほど毎回、それも共和党候補に投票する傾向がある。

 投票率が低いということは、あまり選挙に行かない層が投票しないということ。現にウォールストリート・ジャーナル紙の最新の調査では、大統領選でオバマに投票した人で中間選挙に「大いに関心がある」と回答したのは、わずか56%だった。

 ウィスコンシン大学マディソン校のバリー・バーデン教授によれば、大統領選では18〜24歳の有権者の3人に2人がオバマに投票した。だが今回は、この層の投票率もほぼ確実に下がる。彼らは従来から中間選挙の投票率が最も低い層で、イラクとアフガニスタンでの戦争終結などオバマに期待した問題も100%解決したわけではないからだ。

「この層はおそらく最もオバマに失望している」と、ギャンズは言う。「彼らが期待した大きな変革は起きていない。誰もアメリカを泥沼から救えないと考え、投票に行かなくなるだろう」

有権者を動かす効果バツグンの質問

 しかし、諦めるのはまだ早い。オバマ夫妻がそろって遊説するなどの攻勢が功を奏し、黒人層の関心が高まっている。08年には記録的な数の黒人有権者が投票しており、若者より動員しやすいかもしれない。

 民主党は伝統的に票集めがうまい。研究によれば、票集めは個人的に呼び掛けるのが一番だ。運動員が電話や戸別訪問で市民としての義務感に訴えれば、投票率は6〜10ポイント上昇する可能性があると、ノートルダム大学のデービッド・ニカーソン講師は指摘する。何時に投票するつもりか、投票前はどこで何をしているかを聞くだけでも、投票率は9ポイントも上昇するという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の投資家心理が急回復、2月以来の強気水準=Bo

ワールド

中豪首脳会談、習氏「さらなる関係発展促進」 懸念が

ビジネス

中国GDP、第2四半期は5.2%増に鈍化 底堅さも

ワールド

トランプ氏の「芝居じみた最後通告」 ロシアは気にせ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中