最新記事

アメリカ社会

自宅にトラを飼う危険なペット熱

2010年9月21日(火)15時13分
ラビ・ソマイヤ

法律上は抜け穴だらけ

 08年8月4日の昼頃、ミズーリ州の動物園で働く16歳のダコダ・ウッドは、観光客に代わって写真を撮ろうとトラの檻に入った。当時の報道によれば、つまずいたウッドに3頭のトラが襲い掛かった。ウッドは喉をかまれ、近くのプールに引きずり込まれた。

 その前日には同じミズーリ州の動物飼育所で、トラが約3メートルのゲートを飛び越え、檻の掃除をしようとしていた26歳の男性を襲った。

 こうした事件は珍しくない。ネコ科の野生動物の保護活動に取り組む非営利団体「ビッグ・キャット・レスキュー」の試算では、90年以降、アメリカでペットのトラなどが人を襲った事件は599件。03年にはマジックショー「シークフリード&ロイ」のロイ・ホーンが、ラスベガスで公演中に7歳のホワイトタイガーに襲われた。

 国際的に報じられるケースばかりではない。ネブラスカ州の動物園では昨年、獣医が治療中にトラに襲われ重体に陥った。テキサス州では体重130キロを超えるトラが逃げ出す騒ぎが起きている。

 それでもアメリカ人はトラを買う。外来種の動物に関する法律は、州によってばらばらだ。多くの州が規制を強化しているが、トラの子供は今でも競りやブリーダー経由で購入できる。アメリカ動物愛護協会によれば、ミズーリ、ネバダ、ノースカロライナ、オハイオ、オクラホマの各州ではいまだに外来種のペットに対する規制が少ない。一部の高価なウサギよりも値段が安い場合もあり、175ドルで売られていたものもあると、マコーマックは言う。

 飼育環境の監視も甘い。マコーマックによれば、保護されたトラの中には、立ち上がるのがやっとの大きさの箱や、排泄物と腐りかけた肉だらけの地下室で飼われていたケースもあった。トラに魅力を感じるのは、「最も獰猛な種類の犬を好むタイプの人たち。最後には手なずけられると思うのかもしれないが、それはあり得ない」と、マコーマックは言う。

 危険なペットを飼うことの是非については、イエーツはコメントを拒否している。「トラが好きでたまらない。それだけだ」

[2010年8月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は

ワールド

中国、日本への渡航自粛呼びかけ 高市首相の台湾巡る

ビジネス

カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも利下げ

ビジネス

米国とスイスが通商合意、関税率15%に引き下げ 詳
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新作のティザー予告編に映るウッディの姿に「疑問の声」続出
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 9
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中