最新記事

米軍

「失言」司令官とオバマの深すぎる溝

2010年6月23日(水)17時55分
ジョン・バリー(軍事問題担当)

軍トップと政治家は尊重し合うべき

 将軍たちと政治のリーダーとの関係が緊張したものになることもある。南北戦争時の北軍の少将ジョージ・マクレランと第16代大統領リンカーンがいい例だ。

 軍司令官は文民のリーダーが下した決定や判断を時に徹底的にけなす。第二次大戦中、チャーチル英首相の下で陸軍参謀総長を務めたアラン・ブルックはしょっちゅうチャーチルを批判していた(ただしブルックは直接口にせず、夜な夜な日記につづっていた)。文民のリーダーが決めた政策に反対し、それを変えるための根回しを(あくまで控えめに)することもある。

 それでも絶対に必要なのは、文民のリーダーと軍のトップが相互に尊重しあうこと。司令官は、政治のリーダーが軍人としての自分たちの専門性を尊重することを望む。反対に司令官は政治のリーダーにのしかかるさまざまな重圧を理解し、その重圧によって政策が妥協を強いられても、(賛成はできないにせよ)それを尊重するよう求められる。

 双方が互いの役割と責任を理解しているかぎり、このシステムはおおむねうまく働く。だがマクリスタルの司令部のスタッフの間でこの気持ちが崩壊していることが、ローリング・ストーン誌の記事から見て取れる。

 マクリスタルと副官たちが、ホワイトハウスのトップに対してあからさまに軽蔑的な態度をとっていることは、懸念される事態だ。記者にペラペラと考えをしゃべってしまう脇の甘さより、そちらの方がずっと問題だ。

 軍隊用語を使えば----マクリスタル司令部の「指揮状況」から判断するに、アフガニスタンでの作戦行動に関してワシントンとマクリスタルとの間に深い隔たりがあるらしい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、エヌビディアに中国向け「H20」輸出許可付与=

ワールド

欧州、ウクライナの利益守る必要性強調 米ロ会談控え

ワールド

アラスカにゼレンスキー氏招待も、米が検討=報道

ワールド

アングル:イラク国民、電力網不安定で太陽光発電に転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    メーガン妃の「盗作疑惑」...「1点」と語ったパメラ・…
  • 10
    今を時めく「韓国エンタメ」、その未来は実は暗い...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中