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「失言」司令官とオバマの深すぎる溝

アフガニスタン駐留米軍のマクリスタル司令官が、インタビューでオバマや政権高官を侮辱。だが真の問題は口の軽さではない

2010年6月23日(水)17時55分
ジョン・バリー(軍事問題担当)

面従腹背? 大統領専用機内でオバマと話し合うマクリスタル司令官(09年10月) Pete Souza-The White House

 夏の暑さにやられて、口を滑らしてしまったのかもしれない。アフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官が、今週末に発売予定のローリング・ストーン誌にスクープされた発言によって窮地に立たされている。

 マクリスタルと匿名の副官数名は、バラク・オバマ米大統領やジョー・バイデン副大統領、ジェームズ・ジョーンズ国家安全保障担当大統領補佐官、リチャード・ホルブルック特使、カール・アイケンベリー駐アフガニスタン米大使らを侮辱したとされている。

 バイデンについて聞かれたマクリスタルは「誰のことだ? バイデン? バイト・ミー(くたばれ)の間違いか?」と発言。さらに、オバマは軍上層部におじけづいていて、アフガニスタン戦争にもかかわっていない、などと話したという。

 折りしもマクリスタルは、23日にホワイトハウスでアフガニスタン情勢に関してオバマと個別ミーティングを行う予定がある。ワシントンへの道中考える時間はたっぷりある。かつての上官で中央軍司令官だったウィリアム・ファロンが、08年3月の雑誌インタビューによって辞任に追いやられた一件を思い出すかもしれない。きっと暑さのせいだ。でなければあんなに傲慢になれるはずがない。

 ファロンは当時、自分だけがジョージ・W・ブッシュ大統領の対イラン戦争を止めることができる、と公言していた。一方でマクリスタルがオバマに対して具体的にどんな不満を抱いているのかは明らかではない。

 それでも砂塵と爆弾とフラストレーションだらけのアフガニスタンで、マクリスタルや副官たちが追い詰められた気分を味わい、正当に評価されないという思いを抱えていることは明らかだ。その怒りのあまり、ついつい本音を記者に漏らしてしまったのだろう。

特殊部隊育ちでメディア音痴

 4つ星の大将をつかまえて「脇が甘い」と言うのも皮肉に聞こえるかもしれない。「経験がなかった」というほうが正確だろう。マクリスタルは特殊部隊出身。他の将来有望な将校たちが日々メディアとバトルを繰り返し、誰に何をしゃべり、何を言ってはいけないのかを学んでいくなか、マクリスタルは訓練期間中から閉ざされた世界の中で過ごしてきた。

 マクリスタルにメディアの注目が集まるようになったのは、09年にアフガニスタンで現職に就いてから。彼はすぐにつまずいた。ロンドンでの講演後に行われた記者会見で立場を逸脱し、オバマ政権がいまだ検討中だった対アフガニスタン政策についてコメントを発表してしまった。その後のオバマとは厳しい話し合いが続き、辞任こそ免れたが、メディアアドバイザーの言うことをもっとよく聞くようにと促された。

「彼はひどい世間知らずだ」と、元大将の退役軍人の1人は当時語った。今回の一件でメディアアドバイザーが辞職した今、マクリスタルはまたもやオバマと不愉快な話し合いをしなければいけない。今回はおそらく甘かったではすまされないだろう。

 ロバート・ゲーツ国防長官は「今回、マクリスタル司令官は明らかな間違いを犯し、お粗末な判断をしてしまったと思う」という短いコメントを発表した。ゲーツによると、マクリスタルはローリング・ストーン誌の記事に登場する全ての当事者に謝罪をして回っているという。怒りを隠そうともせず、ゲーツはこう言った。「われわれが唯一考えるべきことは......アフガニスタンで勝利することだ。こんなたわごとではなく」

 ローリング・ストーン誌の記事は、一時のたわごとでは済まされないかもしれない。

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