最新記事

外交

米英に迫る「熟年離婚」の危機

オバマ大統領と折り合いの悪いキャメロンが英首相に就任すれば、長年の「特別な関係」は一気に冷え込みかねない

2009年10月8日(木)17時18分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

犬猿の仲に? 過去の絆より合理的な判断を優先するオバマにとってキャメロンの掲げる政策は受け入れがたい(2008年7月26日、ロンドン) Jim Young-Reuters

 10月6日、英フィナンシャル・タイムズ紙に洞察力に富んだ記事が掲載された。テーマは、英保守党を率いるデービッド・キャメロン党首の反欧州志向によって米英関係が冷え込む可能性について。フィリップ・スティーブンズ記者は「(米大統領のバラク・)オバマは同盟国に対して感情に流されない判断をする」と書いた。

 私は、それ以上だと思う。オバマはほとんどの問題について感傷を排した対応をしている。ある米政府高官は、オバマにはビル・クリントン前大統領と並ぶ「統合的な知性」があると好意的に評した。また、自分が接してきた歴代大統領のなかでも「際立ってクールな人物で、合理性と冷静な判断を重視している」とも語った。

 オバマの冷静な理性は、アメリカの国際関係全般に影響を及ぼしている。なかでも大きく変わりつつあるのは、諸外国との関係における歴史の役割だ。

 もちろんオバマも学術的な意味では相手国との歴史的な経緯を認識している。だが、相手が友好国であれ敵国であれ、従来の付き合い方を重視するつもりはないようだ。

オバマはイギリスとアメリカの兵士が肩を並べて戦った第二次大戦中の感動的なシーンについて語ることがあるが、それを実際に体験したことはない。ベトナム戦争は彼が高校に入学する前に終結していたし、ロースクールを卒業してキャリアをスタートさせた頃には冷戦も終わっていた。

オバマは国際政治界の新人類

 第二次大戦に出征した汎大西洋主義者の父をもつ、15歳年上のジョージ・W・ブッシュ前大統領とは対照的だ。オバマは前任者らとはまったく違う種類の生き物なのだ。

 彼が同盟関係に無関心という意味ではない。NATO(北大西洋条約機構)や古くからの友好国の重要性を理解していないという意味でもない。

 それでも、オバマはかつての敵や現在の敵に関与政策を取り、G8(主要8カ国)の代わりにG20(20カ国・地域)の首脳サミットで重要議題に署名し、従来と違うイスラエルとの関係を模索し、カイロでイスラム社会に協調を呼びかける演説をし、就任早々にアフリカを訪問している。

 こうした行動はどれも、前任者たちのつくってきた「型」にとらわれないという決意の表れだ。実際、今のアメリカは、イギリスやドイツよりフランスの指導者と良好な関係を築いているといわれるほどだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙でスティーブンズが的確に指摘したように、キャメロンが予想どおりイギリスの首相に就任すれば、この傾向は一段と顕著になるだろう。

 キャメロンとオバマの関係構築は出だしでつまづいている。二人のイデオロギーは正反対だ。キャメロンが欧州連合(EU)の新たな基本条約であるリスボン条約を軽視すれば、状況は一段とこじれ、イギリスはオバマととまったく違う世界観を追求することになるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カタールがLNG輸出で「不可抗力宣言」、通常生産再

ワールド

イラン製無人機への防衛で米などが支援要請=ゼレンス

ワールド

イラン、米国へのメッセージ巡るアクシオス報道を否定

ワールド

ホワイトハウス「スペインが米軍との協力に同意」、ス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中