最新記事

テクノロジー

フェイスブックが1万人雇用を発表したメタバースとは何か IT、ビジネスでにわかに流行

2021年10月19日(火)17時09分
「マシーン幻覚 宇宙:メタバース」と題するアート作品

米フェイスブックは「メタバース(巨大仮想現実空間)」を構築するため欧州で1万人を新規採用する計画だと発表した。写真は「マシーン幻覚 宇宙:メタバース」と題するアート作品。香港で9月開催されたデジタルアートフェアで撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

米フェイスブックは18日、「メタバース(巨大仮想現実空間)」を構築するため欧州で1万人を新規採用する計画だと発表した。

IT(情報技術)やビジネスの空間において、メタバースがにわかに流行語に躍り出てきた。この言葉は何を意味するのだろうか。

メタバースとは何か

メタバースという言葉は幅広い意味を持つ。人々がインターネット経由でアクセスできる共有の仮想世界空間の全般を表すための用語だ。

メタバースは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を使い、より現実世界に近づけたデジタル空間を指すこともある。

一方、ゲームの世界を説明するのにメタバースという言葉を使う人々もいる。ユーザーはゲームの中で自分のキャラクターを持っており、歩き回ったり、他のプレーヤーと交流したりすることが可能だ。

ブロックチェーン(分散台帳)技術を用いる特殊なメタバースもある。この種のメタバースでは、ユーザーが暗号資産(仮想通貨)を使って、仮想の土地などのデジタル資産を買うことができる。

SF小説・映画の中には、本格的なメタバースを舞台とするものが多い。現実世界と並存し、現実世界と識別不可能なデジタル世界だ。ただ、こうした本格的なメタバースはまだフィクションの世界のものだ。現状、大半の仮想空間は現実世界というよりは、いかにもビデオゲームの中の世界らしく見える。

なぜ急に人気が出たのか

メタバースのファンは、これがインターネットの次の発展段階になると考えている。

現在、人々がオンラインで交流する際にはソーシャルメディアのプラットフォームを訪れたり、メッセージアプリを利用したりする。メタバースが目指すのは、人々がもっと多次元で交流できる新たなオンライン空間を作り出すことだ。そこではユーザーがデジタルコンテンツを見るだけではなく、自らその中にどっぷりつかることができる。

メタバースへの関心が加速度的に高まったのは、新型コロナウイルスのパンデミックが原因かもしれない。リモートで勤務や学校の勉強をする人々が増えたため、より現実世界に近づけたオンライン交流の需要が高まった。

関連する企業

「次なる目玉」のトレンドに乗りたいと願う多くの投資家や企業が、メタバースの概念に引き寄せられている。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は7月、今後5年程度でソーシャルメディア企業からメタバース企業への移行を目指すと述べた。

シリコンバレーでもメタバースが人気だ。マイクロソフトも、デジタル世界と現実世界の融合に言及したことがある。

3月にニューヨーク証券取引所に上場した子ども向け人気ゲーム運営会社、米ロブロックスはメタバース企業を名乗っている。米エピック・ゲームズの人気ゲーム「フォートナイト」もメタバースの一例と見なされている。

こうしたプラットフォームではミュージシャンの仮想コンサートも可能だ。例えば9月には米人気歌手アリアナ・グランデさんがフォートナイトで仮想ライブを行い、エピック・ゲームズによると何百万人もが視聴した。

世界有数のファッション企業も、仮想の洋服を作る試みを行っている。人々はメタバース内でアバター(分身)として試着ができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、追浜と湘南の2工場閉鎖で調整 海外はメキシコ

ワールド

トランプ減税法案、下院予算委で否決 共和党一部議員

ワールド

米国債、ムーディーズが最上位から格下げ ホワイトハ

ワールド

アングル:トランプ米大統領のAI推進、低所得者層へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 5
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 6
    配達先の玄関で排泄、女ドライバーがクビに...炎上・…
  • 7
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 8
    米フーターズ破綻の陰で──「見られること」を仕事に…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子の「自撮り写真」が話題に.…
  • 10
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中