最新記事
SDGsパートナー

古民家再生、古木で「世界を結ぶ」──山翠舎が切り拓く建材の新たな可能性

2025年1月10日(金)16時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

また、2024年1月に発生した能登半島地震で倒壊した古材の回収事業においては、株式会社坂茂建築設計とパートナーシップを組んで参画。回収した古材は現在、山翠舎の倉庫に保管されており、今後、都内の商業店舗などでの活用が予定されている。

newsweekjp20250109101232-d5328159fda10fa3fadbf31456fd5073c7e7d547.jpg

被災地、石川県珠洲市での古材回収作業の様子(2024年9月)。70本近くの古材を回収した

大学との協力も進展している。京都工芸繊維大学と共同で古木の3Dスキャンシステムを開発中だ。これが実現すれば、古木の形状確認やデザイン検討が容易になり、需要の拡大が期待される。さらに、海外デザイナーとのプロダクト企画では、3Dデータを活用することで遠隔での綿密な打ち合わせが可能になり、商品やサービスの可能性が一層広がる。

newsweekjp20250109101206-687accf246a8b53c74ce81acb2c9f697e8d9aa4c.jpg

京都工芸繊維大学との協働により、3Dデータ化した古木

古木の価値を世界に発信、海外のアーティストやデザイナーともコラボ

同社は創業時、木工を主体とする企業であった。そこから2代目が内装工事等に事業を広げ、古木を活用した事業を始めたのは3代目の現社長だ。

しかし当初は、古木の事業を推進すること自体が直接SDGsの達成に繋がるという理解が社内で不足していたという。さらに従業員数も20人程度と、限られたリソースでSDGsの取り組みを行う必要があった。

そのため毎週の社内勉強会に加え、多くの外部・自社メディアを駆使して、自社SDGsの取り組みを発信。それを継続することで、社内での認知度や取り組みが向上していった。外部のSDGsに取り組む先進企業や専門家とも連携して問題などの解決を図ることで、取り組みを円滑に実施することもできている。

こうして社内一丸となって取り組んできた結果、同社の古木を使った家具は、グッドデザイン賞2020「審査員の一品」や、ウッドデザイン賞2020「特別賞」などを獲得するなど、高い評価を得ている。

2024年には、公益財団法人日本生産性本部の経営品質協議会から、古木サーキュラーエコノミーの実現に向けた先進的な経営が評価され、第6回経営デザイン認証の「スタートアップ認証」を取得。また、古木や古材の所有者と活用希望者をマッチングさせる「古材マッチングシステム」で特許を取得し、古民家・古木分野での新たな市場開拓に挑戦している。

山翠舎の取り組みは国内に留まらず、世界へと広がりつつある。2024年4~9月には六本木ヒルズの森美術館で開催された世界的アーティスト、シアスター・ゲイツ氏の個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」において、古材を使用した大型什器の制作を担当し、古木のアップサイクルの重要性を示す成功事例となった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中