最新記事
SDGs

兵庫県のスタートアップから見える淡路の未来

2023年3月14日(火)12時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
兵庫県庁舎

兵庫県庁/兵庫県提供

<少子高齢化や人口減少といった課題に尽力してきた兵庫県産業労働部新産業課長の木南晴太氏。現在はスタートアップに関するさまざまな施策や、空飛ぶクルマなどの次世代産業の振興に携わっている。スタートアップの現状や地域に期待したいことなどについて話を聞いた>

さまざまな施策で課題解決型の事業を支援

兵庫県のスタートアップ施策は、平成25年度に女性起業家を支援する事業から始まりました。その源流を遡っていくと阪神・淡路大震災に辿り着きます。震災5年後に、被災地の困りごとをコミュニティ・ビジネスで解決し、かつ金銭が発生する仕組みを考える事業を支援する目的で、「生きがいしごとサポートセンター」を設立。兵庫県のスタートアップ施策は、20年以上の実績があるともいえます。

これまでにないビジネスモデルによって新しい市場を創り出し、短期間で急成長するユニコーン企業を育成するのが元々の施策目的。しかし、今年に入って見直しを図り、これまではビジネスの対象ではなかった社会課題の解決に取り組む事業を大切にする、新たな視点を取り入れました。スタートアップ主体というよりも、課題解決主体に方向転換した形です。

現在、成長支援、資金支援、場づくりという3つのステージに分けて展開。成長支援ではアクセラレーションプログラムの「SDGsチャレンジ」や地域課題と企業をマッチングさせ、課題解決を目指す「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」など、資金支援では起業資金を補助する「起業家支援事業」や「ポストコロナ・チャレンジ支援事業」などを行っています。また、場づくりではコワーキングスペース「起業プラザひょうご」の運営といった具合に、さまざまな施策を進めています。

hyogo230313_2.jpg

起業プラザひょうご/兵庫県提供

これまでの取り組みで感じたのは、個人的な経験から課題を解決したいという思いから始めた事業が多いことです。例えば、株式会社フードピクト(神戸市)は、創業者の菊池信孝さんが学生時代にイスラム圏からの留学生をもてなした際、安心して食べてもらえる日本食を紹介できなかった経験が起業のきっかけになっています。

hyogo230313_3.jpg

フードピクト事業のロゴ/株式会社フードピクト提供

どんな食材が使われているのかを世界共通で理解できるピクトグラムを制作し、年間のライセンス料をホテルや飲食店などからいただくビジネスです。現在は、プラントベースの商品開発にも取り組み、ピクトグラムの次の事業にすべく注力しています。このような社会課題の解決にこそ、自治体が支援する意味があるのではないかと思っています。

「食や農」のスタートアップを支援する拠点に

兵庫県は摂津、播磨、但馬、丹波、淡路という5つの国から成り立っている多様性に富んだ地域です。それぞれ歴史や文化、地形、風土、気候が異なるため、産業や産物の違いがスタートアップの分野にも表れています。例えば臨海部に工場が多い摂津や播磨はものづくりが盛んで、震災後に医療産業都市として発展した神戸には、医療系のスタートアップが集まっています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院、州独自のAI規制導入禁止条項を減税・歳出法

ワールド

トランプ氏、ハマスに60日間のガザ停戦「最終提案」

ビジネス

米ハーシー、菓子の合成着色料を27年末までに使用停

ビジネス

メキシコへの送金額、5月は前年比-4.6% 2カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中