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兵庫県のスタートアップから見える淡路の未来

2023年3月14日(火)12時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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神戸医療産業都市/神戸市提供

淡路は多種多様な魚介が獲れるだけでなく、タマネギをはじめとした農産物も豊富。さらに淡路牛に代表される肉用牛の産地でもあります。そして、洋食文化発祥の地である神戸とも近いのが特徴です。もともと兵庫県全体が「食や農」に深く関わっていて、その拠点を担うのが淡路なのではないでしょうか。

実際に、パソナグループによる農家レストランやオーベルジュといた飲食店や施設が多数オープンしています。私が子供の頃に海水浴でよく訪れていた西浦(淡路島西岸の総称)は、今では若い人たちがこぞって遊びに行く人気エリアに様変わりしています。「自然と暮らし研究所」は立ち上がったばかりの施設ですが、これから「食や農」で起業したいという人たちが、交流できる場になることを期待しています。

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自然と暮らし研究所

兵庫県には、「起業プラザひょうご」のブランチが尼崎市と姫路市にあるほか、商工会議所や民間業者がやっているものなど、たくさんのコワーキングスペースがあります。起業の相談相手になってくれるコーディーネーターがいる施設も多く、彼らが兵庫県内にいるさまざまな人たちを繋ぎ合わせてスタートアップを促進させるような、そんな仕組みができないかと考えています。

淡路には、島の中央に位置する洲本市に「Workation Hub 紺屋町」というコワーキングスペースがありますが、北淡路エリアの拠点を「自然と暮らし研究所」が担うこともできるでしょう。パソナグループのネットワークを活用して、淡路だけでなく、東京をはじめとした遠い地域の人たちとも出会いを創出してくれる。そして、ここに行けば、何か学べるんじゃないか、面白い人と出会えるんじゃないかと思わせてくれる。そんな存在になってくれればいいなと思います。

住民が力を合わせて課題を解決する地域を目指す

もう少し先のことを考えると、地域の困りごとを住民たちが自ら解決し、そのコミュニティの中でお金も回る仕組みをつくることも大事だと考えています。実は「生きがいしごとサポートセンター」では、得られる報酬は少額でもよくて、地域の役に立ちたいという相談が増えています。手の空いている人たちが集まって、小規模の事業をするイメージです。

そう考えると、これまでの会社という器にこだわる必要はなく、単なる人間集団でも起業は可能です。例えば、昨年10月に施行された労働者協同組合法は、住民が皆で意見を出し合い意思決定を行い、地域の課題を自ら解決していく新しい法人をつくるための制度として注目されています。

皆が満足しながら働き、自分たちの力で地域を少しずつ良くしていく。兵庫県内にそんな地域を少しでも増やしていくのが私の目標です。


木南晴太
兵庫県産業労働部新産業課長

兵庫県神戸市出身。1996年兵庫県入庁。国土計画や環境政策などの業務を経て、企画部ビジョン課では「あわじ環境未来島構想」や「ひょうごビジョン2050」などの計画づくりを推進。2022年に産業労働部新産業課長に就任し、スタートアップ施策と成長産業の振興に携わる。

●自然と暮らし研究所のホームページはこちら
https://naturelabo.jp/

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