最新記事
感染症

アメリカの「ワクチン接種率」はなぜ下がったのか?...予測モデルが示す「20年後のシナリオ」

Back With a Vengeance

2025年5月29日(木)14時20分
イアン・ランドル(科学担当)
はしか

ワクチン接種ではしかが排除されたはずのアメリカに再び感染が広がる WILDPIXEL/GETTY IMAGES

<子供のワクチン接種率がアメリカで落ち込んでいる。予防できるはずの病気が多くの命を奪いかねない>

はしか(麻疹)は、アメリカでは四半世紀前に排除された感染症だ。

ところが、ワクチン接種率の低下が原因で、20年以内に「計り知れない」スケールで復活を遂げる可能性がある──こう警鐘を鳴らす研究が4月に医学誌米国医師会報(JAMA)に掲載された。

既にアメリカ各地ではしかの集団感染は起きている。最近もテキサス州西部で620人以上が感染。64人が入院し、2人の子供が死亡している。


「ワクチン接種率が低下しても直ちに影響が生じるわけではない。だがいずれは、数十年にわたるワクチン接種の取り組みのおかげで今日の臨床医の大半が目にしたこともないような、はしかによる恐ろしい合併症が復活してくる可能性がある」と、JAMAの論文の執筆者の1人であるスタンフォード大学のネーサン・ロー助教(感染症学)はコメントしている。

「はしかを取り巻く状況は、大惨事に発展する一歩手前まで来ている。ワクチン接種率を引き上げることができなければ、約20年以内にアメリカでエンデミック(感染症が一定の地域に常在している状態)になりかねない」と、論文の筆頭著者であるスタンフォード大学のマシュー・キアン助教(疫学・公衆衛生学)は述べている。

その場合、今後25年間に推計で85万1300人の患者が発生し、17万200人が入院し、2550人が死亡する計算だという。

「見落としてはならないのは、患者は1人も発生すべきでないということだ」と、キアンは主張する。「はしかは予防可能な病気なのだから」

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、シリア南部の暴力行為を非難 責任追及を要請=当

ワールド

英、選挙権年齢16歳以上に引き下げへ 29年総選挙

ワールド

イスラエル、シリア国境地帯の非武装化要求 トルコは

ビジネス

アマゾン、AWSクラウド部門で人員削減 数百人に影
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 5
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 6
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 10
    「1日30品目」「三角食べ」は古い常識...中高年が知…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 10
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中