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「達成の快楽は20世紀的」 佐々木俊尚に聞いた、山頂を目指さない「フラット登山」の魅力

2025年5月30日(金)18時00分
一ノ瀬伸

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夏の日の霧ヶ峰高原(長野県) COURTESY OF TOSHINAO SASAKI

AIが進化している近年では、身体感覚がものすごく大事だなとつくづく思います。AIは多くの人間の頭脳労働を代替していくと言われています。一方で、いまのところロボティクスはあまり進化していなくて、二本足で立って掃除をしたり、高齢者をお風呂に入れたりというロボットは実用化されていない。そうなると、身体感覚の重要性は当面なくならないだろうし、自分の足で歩く気持ちよさみたいなものはAIに代替されないだろう、と。

もう一つ言えば、テクノロジーはますます滑らかになっていますよね。いろいろと操作しなくても好きな音楽が聴けたり、いわゆる「ゼロUI」になっていく。流れる水のように滑らかで気持ちいいけれど、同時に自分が世界とつなぎ止められている感覚がなくなっている。そういうときに、気持ちいい摩擦が必要になってくるじゃないかと思うんです。その一つが、山を歩き五感で感じる気持ちよさだということ。つまり、フラット登山です。

──日頃、頭の周辺だけを使って身体感覚を持て余していたり、摩擦を欲していたりする人は、特に都市生活者に多いと思います。最近では脳疲労という言葉もよく聞かれ、あえて身体を動かすことで回復を促すアクティブ・レストも注目されています。

脳の疲れは、休日に寝ているだけでは治らなくて、身体に軽い負荷をかけるといいと言われています。「チョコザップ」がはやっているのもそういうことかなと思います。ただ、ジムでの運動は単調なので、きちんと目標がないとちょっとつまらないかもしれません。だから自然の中でいろんなことを感じながら適度な運動ができるフラット登山は、脳が煮詰まっている人にピッタリだと思いますね。

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