最新記事

ライフスタイル

「奨学金880万円」借りて大学進学した彼女が東京で見つけた仕事とは

2022年2月6日(日)08時18分
千駄木 雄大(編集者/ライター) *東洋経済オンラインからの転載
ウォーターフロントを眺める女性の後ろ姿

東京の大学に行くため、奨学金880万円を借りた女性。結果、自分でも思いもよらなかった仕事につくことに…… *写真はイメージです monzenmachi - iStockphoto

「10代の若者が数百万円の借金をする」――。今多くの若者が大学に進学するために「奨学金」を借りるが、"子どもの判断力"で借金をした結果どうなるかは、意外にあまり知られていない。
学歴社会において「大卒」という肩書きが必須となっている以上、学生目線では「借りないわけにもいかない」という現実もある。「そもそも大学の授業料が高くなっている」「学費を担ってきた親側におしよせる、可処分所得の減少」など、親たちの経済事情も刻々と変わっている。
そこで本連載では、奨学金を実際に借りた当事者たちに取材。「借りたことで、価値観や生き方にどんな変化が起きたのか?」。彼らのライフストーリーを追っていく。

今回、話を聞くのは山田志保さん(24歳・仮名)。東北地方出身で、関東圏の4年制大学を卒業後、出版関係の企業に就職して3年目になる女性だ。

借りた奨学金は、第1種(無利子)が307万2000円、第2種(有利子)が576万円で、合計して883万2000円......およそ900万円という金額だ。その結果、月々の返済額は3万6977円。これが20年間続くという。

「東京の大学に行こうと思って親に伝えたら、『生活費と学費は自分で出してね』と言われたのが、奨学金を借りたきっかけです。家の財政事情はなんとなく把握していたので、『でしょうね』というのが、正直な感想でしたね。両親はともに高卒で、大学がどんな場所か知らなかったのも影響していたと思います」

かつては、漁業で栄えたが、今はすっかり衰退してしまっているという志保さんの故郷。家族構成は両親と兄で、兄も中学を卒業後すぐに働き始めて、現在も実家で暮らしているという。3人とも堅い仕事をしており、比較的保守的な考えの人たちのようだ。

また、高校の教師たちも、同じように保守的で、志保さんの肌には合わなかった。

「私が通っていた高校は、地方によくある『自称』進学校でした。田舎の公立進学校ってだいたいそうだと思うんですけど、地元国公立至上主義で、そこに進むことをめちゃくちゃ勧められるんです。1年生の時にはわざわざ学年全員でバスに乗って見学しにいったりしていましたね。そんなだから、私も1年生ぐらいまでは地元の国公立を目指してたんですが、2年生の時に『やっぱり都会の私立に行きたい』と思うようになって」

上記のような理由で、東京の私大への進学を決意した志保さん。となると、気になるのは両親が負担してくれる割合だが、どうだったのだろうか。

「家賃・生活費・学費のうち、親が出してくれたのは、学費の半分でした。一人暮らししたことがなかったので、どれくらいのお金が毎月必要なのか、いまいち想像できず、無利子の第1種、有利子の第2種ともに満額を借りることにしました。今思えば、もっと少なくしておけばよかったんですけど......」

この時点で、その後始まる返済生活に暗雲が立ち込めている印象だが、焦らず、時系列に沿って聞いていこう。

東京進学も「落とし穴」が......

多額の奨学金を借りてまでも夢見た、東京でのキャンパスライフ。希望した大学には受かったが、落とし穴があった。そのキャンパスがあるのは都内ではなく、神奈川だったのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏誕生日・米陸軍の祝賀行事、戦車25両展開

ワールド

米、対ベトナム貿易赤字に懸念 「持続不可能」と伝え

ビジネス

午前のドルは145円前半に下落、円安是正への警戒感

ビジネス

米ウォルマート、関税対応で商品値上げへ 5─7月期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に生物がいる可能性【最新研究】
  • 3
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習い事、遅かった「からこそ」の優位とは?
  • 4
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 5
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 6
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 7
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 8
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 9
    トランプに投票したことを後悔する有権者が約半数、…
  • 10
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中