最新記事

女性問題

男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉

2021年4月18日(日)16時45分
本川 裕(統計探偵/統計データ分析家) *PRESIDENT Onlineからの転載

はなから構成指標の妥当性などが議論されることはなく、もっぱら日本は女性差別のヒドイ国だと主張したい場合の絶好のデータという観点だけで世界経済フォーラムの「総合ランキング」が引用されているように感じられなくもない。

この手のランキングは、構成する複数の指標を加重平均して作成される総合指標によっており、指標の選択やウエートづけは作成者の考えによっているので、結果も恣意的になりがちである。

(※私が主宰している「社会実情データ図録」サイトでは極力、そうした総合指標のランキングは取り上げないようにしている)

例えば、複数指標を総合化した世界各国や都道府県の幸福度ランキングが複数発表されているが、それがOECDの作成する権威あるランキングであっても、なるべく、無視するようにしている。幸福度を「そうであれば幸福であるに違いない」という観点から、所得、生活環境、医療介護、格差、自然などの状況の良好度を総合して順位づけしている場合がほとんどであり、「それで幸せを感じるのかは人それぞれ、国それぞれなのだから放っておいてくれ」と言いたくなる。

そして、幸福度を測るなら、幸福かどうかを聞いた意識調査によるのが一番だと思っている。

一貫して、女の幸福度が男を上回り続けている日本人

さて、本題に入るが、幸福かどうかを聞いた結果の幸福度を、他のさまざまな項目とともに、ほぼ5年おきに国際的に共通調査票で調べている「世界価値観調査」の最近回の結果が公表されたので(2021年1月)、このデータのジェンダーギャップについての国際比較を次に試みよう。

ジェンダーギャップ指数と幸福度の男女格差はどんな関係にあるかを知りたいと思う人は多かろう。

幸福度そのものの国際比較は、質問文の言語の差、あるいは幸福に対する文化的な考え方の差異が影響して解釈が難しい。例えば、所得水準に比例しているという結果はあるが、低所得の国でも幸福度の国別のばらつきは非常に大きいのである。

ただし、それぞれの国の幸福度の男女差については、回答者が同じ言語を使用し、同じ幸福感を持っている場合が多いはずであるので、むしろ、幸福度そのものより国際比較に適していると考えられる。

国際比較に入る前に、まず、日本人の回答結果について、時系列的に過去からの推移を振り返っておこう(図表2参照)。

reuters__20210418162740.jpg

幸福度(幸せと回答した者の比率)の推移は、男女計では、1981年、1990年には、77%程度だったが、2000年、2005年、2010年、2019年には、86~88%となっている。バブル期までより、その後の失われた10年、20年と呼ばれる時期のほうが、幸福度ではより高い水準となっており、意外な結果だともいえる。

ここで主題としている男女差だが、女性の幸福度から男性の幸福度を引いた数字で追ってみると、1981年から1990年に6.5%ポイントから8.1%ポイントへと開いた後、2005年にかけて2.3%ポイントまで狭まったが、2010年には8.1%ポイントと再度広がっている。2019年にもほぼ同レベルの7.2%ポイントの開きとなっている。

日本においては女性のほうが男性より幸福感を感じやすい状況が続いているといえよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中